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□きっと今なら永遠を誓える
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さて、帆をはろう。
水平線に野望と夢を抱け。
海の上を駆ける風を捕らえろ。

時は還る。


一人の小さな海賊と男が出会うよりも前。
一人の小さな海賊と男がわかつよりも前。

一人の海賊が大海原を自由に駆け、海賊王となるその時まで。




時は戻る。











「ふぁー、ねむ」

「ちゃんと仕事してください、キャプテン」




あと十分経ったら起こして。

欠伸をしながら寝返りを打つ男に――男を起こすよう頼まれた――若いクルーは額に青筋を浮き上がらせた。






「起きろと言っている!」

「あだっ」


枕がわりにしていた毛布を引っこ抜くとド派手な音をたてて男が頭を下へ打ち付ける。
「あんまキャプテンいじめんなよー」「村越はこぇーなー」等という言葉を一切流して、若いクルー…村越は男を見下ろした。






「…ん、もうちょっと優しくしてよ」

「あんたの目覚めがよかったらな」




起き上がった男の肩にキャプテンが着るコートを羽織らせながら村越が舌打ちする。
男は金と銀のボディをした豪勢な銃二丁と小刀を海図が広げられたテーブルの上から手探りで取ると最後に帽子を村越の頭に被せた。





「にひ、似合ってんよ」

「……海、泳ぎてぇか?」





「遠慮しとくー」





怖い怖い、と男は肩をすくめると船長室から出る。
途中すれ違うクルーからは「また村越困らせてるんスか」「ほどほどにしてくださいよ」と声をかけられた。









「あ、おはよー松本さん」




「おう、起きたのか」

「あれ、松本さん縮んだ?」

「縮んでねーよ」

「にひひ、」




甲板に出ると水平線を眺めていた松本に男は微笑み、松本は男の笑みに目を細める。
それから「あの頃はかわいかったのになー」と笑い混じりのため息をついた。






「この船に乗った最初の方は何かあるたびに俺の名前呼んでたってのによ」

「おかげさまで大きく成長しましたー」





にひひと笑う男に松本は笑みを浮かべると頭を撫でた。
子供扱いすんなよ、と怒る顔はあの頃のままだ。







「達海」





「なにどしたの、後藤」




甲板に現れた男…後藤に達海と呼ばれた男が視線を移す。
後藤は「なにじゃない」と若干怒り気味に達海の腕を掴んだ。





「おまえこの前怪我したのにそのままにしといたな」

「えー舐めときゃ治るよ」

「っとにおまえは」




眉間に皺を寄せた後藤が露わになった達海の腕の傷を見、治りかけていることにため息をつくと化膿止めの薬を塗った。
痛い痛い、しみる!と叫ぶ声など聞こえないふりだ。






「なんか最近、後藤ってば笠さんに似てきたね」

「はぁ?」




「親父くさい」




なんだよそれ、と後藤が言う前に「はははは」と笑い声をあげた笠野が後藤の肩に腕を回す。
主に気配を絶って現れる神出鬼没の笠野に後藤と松本が「ひっ」と間抜けな声をあげた。







「おいおい達海、若い兄やんを老いぼれと一緒にすんな」

「笠さぁん、おはよー」



達海が船に乗って以来、達海の親代わりとして名前を与えたりしたからか――他のクルーも言葉を(遊び半分で)教えたり世話をしたというのに――笠野は達海になつかれていた。
達海は笑みを浮かべると笠野に抱きつこうとし、べしっと額を軽く叩かれ「うぇっ」と間抜けな声をあげる。






「いい加減、親離れしやがれ」

「……〜っ」




そうだぞ、達海。

そう頷き合う松本と後藤が両手を広げて達海を待っているのを見、達海は二人に軽く蹴りをお見舞いした。






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