!!

□夢のような話をしようか。
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笑顔で、また。

交わした約束を叶える未来を想って足を踏み出した。
異国の地で名を馳せ、必ず帰ってくると。








「んー…懐かしいね、」



自分の生まれた国に帰ってきた男は空港に降り立ち、笑みを浮かべる。

マスコミは、いない。
天気は晴れ。快晴。

なかなかいんじゃないの?







「さてと、行きますか」





笑みを浮かべたまま、男は歩き出した。


















あれ、誰だろう。

朝イチで所属するチームのクラブハウスにやってきた選手、椿大介はピッチの真ん中に佇む男を見、首をかしげた。

…一般人だったら注意しなきゃいけないんだろうけど、酔っぱらいだったらやだなぁ。

チキン丸出しのことを思いながら椿はピッチへと向かって行こうとし――「あ」と男が椿よりも先に声をあげた。






「おまえETUの選手?」

「!え、あ、ッス」



年上、だよな?

童顔の男を見て椿はふと思い――男は男で椿をじろじろと見るとにやりと笑う。





「あの、ここは、」

「あー、俺行くとこあんだった。
じゃあまたね」




男は最後まで椿に話の主導権を渡すことなく話を終わらせるとさっさとクラブハウスの中に行ってしまった。


関係者かな?



椿は呆けたように突っ立っていたが練習があることを思い出すと急いでロッカールームへと走り出した。











「なんか新しい選手が来るらしいぜ」

「今?」

「ふぅんどこから?」

「イングランドのプレミアムリーグ」

「え、外人!?」




練習前に集合した選手たちはそんな会話をし、その中で黙っている選手…村越は眉間に皺を寄せていた。




「(…ったく、新しい選手がなんだ。
新戦力をいれて現状維持したって勝たなきゃ意味ねぇだろ)」




ここ数年負け続けてるチームを思い返し、村越はぎり、と拳を握りしめる。
ふと脳裏にチームから消えたとある男の姿が浮かび上がり――何夢を見てるんだとその姿を消した。





「新しい戦力かぁ。
俺たちレギュラーじゃないからやだな」

「…そっスね」

「ふん、そんなん実力がなきゃ意味ないっスよ」



所謂レギュラーではない若手組の世良と赤崎はそれぞれの思いを口にし、椿は先程あった男のことを考えていた。

まさかあの人が…





「注目してくれ」




コーチの松原が手を叩き、選手たちの視線が集中する。

こほん、と松原は咳払いをすると「皆知ってると思うが、新戦力として新しい選手が移籍してきた」と言葉を続けた。
それから選手たちがその新しい選手が松原の横にいないことにざわざわと話をしているのにため息をつくと――「ったくアイツは」と眉間に皺を寄せる。





「あ、松ちゃんごめーん。
ほら向こうとコッチって時差があるからさ、色々大変で」

「今は関係ないだろ今は!」




ピッチに現れたジャージに着替えた男を見、村越が目を見開いた。
村越だけでなく他の選手も「あれって、」と呆けたように男を見ていた。






「達海猛、この度イングランドのプレミアムチームからこのETUに移籍してきました。
仲良くしてね」





「た、達海だ!!」

「日本代表のエースだった、達海…!?」




あれ、俺人気なの。

一気にどよめいた選手たちを見、達海が首を傾げる。
椿はそんな達海を見、そうだ、あの人日本代表の達海さんだ!!と朝気付かなかった自分に絶望しつつ達海を見ていた。





「お、朝会った奴、名前なんだっけ」

「つ、椿大介っス!」




「椿ね、よろしくー」




外国で暮らしていたためか達海は椿に軽くハグをするとにひーっと笑みを浮かべる。
椿は顔を真っ赤にして「ッス!!」と頷き――村越を見て固まった。





「…あんた、」

「お、村越。元気そーじゃん」



にひ、と笑う達海に人をも殺せそうな雰囲気を纏った村越は口を開こうとし――達海に人差し指を突き立てられ、黙る。

まぁ積もる話もあるけどさ。





「俺が使えるかどうかっていうテストも含めて紅白戦やってくれるみたいだからさ」







俺レギュラーじゃない組ね。

挑戦的な笑みを浮かべる達海は久々の再会を果たした後輩を見つめる。






「フットボール、しようぜ」







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