!!

□Love is blind.
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!義足ぱろ!
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クラクション。

にぶい、衝撃。
世界は、反転。
誰かの、悲鳴。

(あれ、全然痛くない。)


起き上がろうとして、違和感。


(足の感覚が、ない?)



振り向いたその先には――――






千切れかけた、俺の、











「ん、」


目を覚ます。
ぼーっとしていた意識がだんだんと覚醒していくなか、達海は大きく欠伸をした。
それから窓を叩いている雫の音に雨が降っているのだと気付く。





「どーりで痛むわけだ」



肌触りのいい、黒いブランケットの上から腿を撫で達海は静かに笑った。
黒いスーツの上に無造作に放られているシャツに手を伸ばし、それを手繰り寄せると腕を通す。






「あ、起きた?」

「今日オフだったっけ、おまえ」



達海は寝室に入ってきた部屋の主からミネラルウォーターの入ったペットボトルを受けとり首を傾げてみせる。
キングサイズのベッドに腰かけた部屋の主――持田は笑みを浮かべると達海に軽くキスをした。





「ン、」

「オフだよ、今日は」





だから達海さん抱いたんじゃん。

ぎゃははは、と特有の笑い声をあげた持田は何か言いたげな顔をしている達海と視線を合わせる。





「いい加減、クラブハウスに帰りたいんだけど?」

「帰ればいいじゃん。
この寝室には鍵もかかってないし、ましてやあんたを拘束するものもない」




それに練習と試合の日はちゃんと送ってあげてるじゃん。

こめかみにキスを落としてきた持田が愉快そうにわらった。
シャワーを浴びた後なのかくるくるした髪はどこか落ち着き、持田の毛先から雫がぽたぽたと落ちる。






「俺は、あんたの足だよ?」




あくまでも無邪気に言う持田は達海にかかるブランケットを剥がし――露わになった傷跡を見てわらう。
そこには右足が、左膝から下が、存在していなかった。







「俺の足、どこやった」

「義足、でしょ?」



達海猛が引退した理由。

本当の理由はデビュー試合にして最後の試合となったあの時の怪我ではない。
(あの「怪我」は本当は「治る」見込みのあったものだった。)

療養中、達海猛は暴走して歩道に乗り上げてきた車に巻き込まれ、右足首と左膝から下を喪った。
皮肉にも怪我のせいで走れなかったことが達海が足を喪った原因でもあった。


自分が足を喪ったことを、達海は誰にも言わなかった。

選手の前では傷跡を露わにしないようにしたし、後藤にさえ言ってもいなかった。
そうであるが故に。






『達海、さん』


ねぇ、俺がさ





『あんたの足になってあげるよ』




確実に壊れる過程に入っていた足を持つ、一人の男から――出会い頭そう言われたことに達海は驚いた。
なんで、気付いた?と








「ねぇ達海さん、形がのこっているのと、全部消えちゃうの、どっちがつらいのかなぁ」



どっちが辛いとおもう?

持田の言葉に現実へ引き戻された達海は傷跡に口づけをする持田を見て眉間に皺をよせた。





「…本当なら見たくないだろ、成れの果てなんて」

「見たくない。見たくないねぇ」




ぎり、と傷跡を撫でていた持田の指が肌に食い込む。
顔を歪ませた達海を見つめて持田はますます笑みを深くした。





「でも目をそらしてもこれは受け入れなくちゃいけない結末なんだよ」




だから俺は。





「その結末の代名詞であるあんたを愛することにした」




愛してるよ、達海さん。
恍惚にもとれる表情をしてわらう持田が達海の喉元に手を伸ばす。




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