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□死神を愛する、
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「達海さんの背負ってるもの、俺は一緒に背負います、」
相手は憧れに憧れていた想い人にきっと試合のどんな場面よりも緊張しながら告白してるっていうのに、当人といったらぼーっと空を見ていてちゃんと話を聞いているのかわかったもんじゃない。
それは相手にもわかっていたらしく、少し戸惑った様子でたった今想いを紡いだ口が「達海さん、」と名前を呼んだ。
「ん?」
「あの、だから、」
「いやいや、話はちゃんと聞いてたよ?」
達海さんはへらっと薄っぺらい笑みを浮かべ――そこではじめて相手の顔を見た。
背負う、ねぇ。小さく呟いた達海が唇を尖らせる。
「一緒に背負うって言ったって、他人に背負ってもらうモンなんか俺にはなんもないけど。」
え、と小さく呟いた相手に達海さんと言えば本当にそうなのだとばかりに――なぜそんなことを言われたのかわからない、というような顔で首を傾げていた。
相手はその言葉を自分の想いを受け取れないということから来ていると思ったのか、適当に挨拶をして去っていく。
「……で、盗み聞きはよくないとおもうんだけど?」
なんだ気付いてたの、
物陰から現れてそう言えば、達海さんは肩をすくめただけだった。
「通ってる病院まで調べあげて偶然装って会いに来てた男振るなんて罪な男だねぇ、達海さんって」
「大方、憧れと恋慕を履き違えてたんだろ」
つーか偶然装ってんのはおまえもじゃん。
達海さんは呆れたように言うとまだ壊れていない俺の足をちらりと見た。
「…ま、せいぜい最後まで楽しむんだね、若者よ」
にひーっと笑った顔に「なにそれ、年寄りくさい」そう言ってやれば「だっておまえよりも年食ってんもん」と唇を尖らせる。
さてと、帰るかなぁ。歩くことはできる達海さんの足はゆっくりと歩き出した。
あまりにも身軽に、歩き出した。
背負うものは何もない、
「(あの言葉に嘘はないんだろうね、きっと。)」
狡い人だから、あんたは。
辛いかったこともたのしかったことも――新たに指導者としての責任を抱えるために、全て過去は置いてきてしまったのだろう。
だからきっと、誰も背負えやしないのだ、この人が背負ったものも、この人自身も。
(きっとこの人は誰かの荷になることがどれだけ残酷か知ってるから)
「…どしたのモッチー、顔こわいよ?あ、いつもか」
いつもってなに、失礼だよ。
そう言いながらも口許を緩め、自分の足を見下ろした。
「俺はね、ラッキーだなって」
「はぁ?」
いつか壊れる足。
背負うものが重すぎて、足は悲鳴をあげ心は限界を叫ぶ。
あんたがかつて背負った運命を俺も知るのだから、きっと。
誰も知らないあんたの痛みを俺は身をもって知る。
(だから)
「俺は、達海さんと並んで歩けるじゃん?」
いつか壊れる足を持つ俺があんたを背負うなんてことはできない。
先を行ってその手を引くには俺とあんたはあまりにも似すぎていて、俺には十分な時間もない。
だからこそ、
誰も理解できない結末を、この人が見た世界の成れの果てを、
俺はこの水晶体に灼きつけられるというのだから。
「きっと俺は幸せな不幸者なんだろうね」
なにいってんの、おまえ。
眉間に皺を寄せた達海さんに笑みを浮かべ、送っていこうか?そう問いかければ達海さんは素直に頷く。
先を歩いていた達海さんは俺を待っている。
一歩、一歩踏み出して達海さんに歩み寄っていく行為はまるで、結末へ向かう俺の運命そのもののようで。
俺の運命は、壊れ始めた足は、軋んだ音をたてながらまた一歩、成れの果てへと近付いた。
死神を愛する、
天使なんて、要らない。
(奇麗なもんじゃないよ、)
(俺たちの結末は、きっと。)
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あとがき。
久々モチタツ!
なんだかとてもモチタツが足りないです。
モチタツモチタツ!←
持田さんは地べた這いずりまわるまで走りたいと思ってるので、きれいじゃないって言ってるわけなんです。
伝わりにくくてすみません
(・ω・`)
拙い文にお付き合いありがとうございました!
2012.1.21 天藍 深