□黄と黒の恋のはじまり
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「、き、せく…ん、」
「黒子っち」


嗚呼どうしましょう
嗚呼心臓の音が聞こえちゃいます
嗚呼体が溶けてしまいそうです




そんなに強く抱き締めないで下さい
そんなに抱き締められたら
きっとボクはどうにかなってしまう







「黄瀬く、苦し…、です」





ぎゅーっとボクの背に腕を回して肩に顔を埋めている黄瀬君は
聞こえないのか力を緩めてくれない。




一方的に抱き締められているような格好をやめたくて
黄瀬君の腕の中に拘束された両腕を動かしてみるがびくともしない。





「黒子っち不足なんスよ」





止めて下さい耳元で喋らないで
止めて下さいそんな声で、
気のせいでしょうか体が熱い
気のせいでしょうか鼓動が早い







「き、せく、」






「そんな声で呼ばないで」




苦笑混じりな笑い方をして
黄瀬君はボクの体をますます抱き締める。





「きせ、くん」






「オレ黒子っちが好き」




それはlikeという意味でしょうか
それはloveという意味でしょうか




「大好き。この世界で一番好き。

願い事を叶えてくれるんなら
黒子っちがほしいって迷わず答えるくらい愛してる」





その愛しているという言葉は
咄嗟に出た言葉なのでしょうか




嗚呼嗚呼嗚呼…



思考回路がうまく動きません
聴覚も視覚もはたらきません





此処は黄瀬君の部屋で
勉強を教えてほしいと言ったから
ボクは彼に勉強を教えていた訳で
そうしたら黄瀬君が
ボクを抱き締め
いつもの過剰なスキンシップかと思っていたけれど
黄瀬君はどこかおかしくて
ボクもどこかおかしくて





呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼………






「……黒子っちは?」





ひとつだけわかるのは




黄瀬君の手がふるえていて、
ボクはこの時間が終わればいいとは思っていなかった、













嗚呼、そうか、これは


















どうしましょう、心臓が、



















溶けてしまいそうだ、




















誰か、とめてください




















気のせいじゃない、




















意味がわからない訳じゃない























思考が聴覚が視覚が……























追い付かなくなる、






















そうか、これが





















「…君の事嫌いじゃないですよ」























恋、なんですね。























想いに気づくのがこんなに難しいものだなんて!














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