□魂の行き着く先
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「…………葛?」



近代化した街並み、立ち並ぶビルの谷。
行き交う人々は遥か昔の惨劇など忘れたかの様。




ビルに支配された空の下、
かすれた声で名前を呼ぶ声が響いた。









「………葵…?」











幾度願っただろうか、
幾千回巡ろうが、





あの時代ではない場所で君と出会いたかった、と





たとえ躯が朽ちようとも
そう、魂が形あるかぎり、





君と別の時代に、
平和な時代で、
どんな空の下でもいいから、





「見た目変わって…ねぇな」
「貴様こそ、そのままだ」





いとおしい声、ふれたい髪、口、鼻、美しい瞳、
そう全てが、全てが変わらない。




わかる、
たとえ形変わろうとも
そのままだと、







魂が探し求めていたものだと









「逢えると信じてた」
「っ、葵…、」



「柄にもなく飛びかかんなよ、吃驚しただろ?」
「馬鹿め、貴様は、本当に、」





「ごめん…葛、」




ようやくふれあう手と手。




幾度となく巡り続け探した、
君という存在を、








求め続けていたんだ、









「逢いたかった、」






ただその言葉をもう一度
ただその体温をもう一度
ただその表情を声を愛を
ただその耳に瞳に口へと







ただこの感情を伝える為に








「愛してる、」


















(それは君の許)












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