「お前さぁ、それ本気で言ってんの?」
やばい。
目の前の彼を本気で怒らせた。
霞んだ視界に入ったのは
彼の黒いネクタイ。
*黒いネクタイ*
「あたしは…」
そのあとに続く言葉はなかなか出てこなかった。
「お前、二言目には浮気って他に言うことないわけ?」
そう言って有吉さんは指でネクタイを緩めた。
その仕草も、すごくかっこいい
なんてこんな状況でも思ってしまう自分はもう頭がおかしくなってるんだろう。
有吉さんが好きだ。
どうしようもないくらいに。
ようやく付き合えた大好きな人なのに。
「…何黙ってんの?」
しんと静まり帰ったあたしの部屋に有吉さんの声が響いた。
「…そ、じゃ」
小さなため息と、諦めたような声があたしの耳に届いたのと同時に
部屋のドアを開ける音が聞こえて
あたしが顔を上げた時には
有吉さんの背中は
ドアの向こうに消えていた。
→続きます