裏学園便り
□熱が出る時。
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「リョーマ、朝の挨拶は?これでも一晩看病してやったんだぜ?」
「…風邪…うつる…」
「構わん」
リョーマはゆっくり顔を近付けると、中嶋の薄い唇にそっと唇を合わせた。
ほのかに昨日の若月を感じて、少し罪悪感を覚えながら。
───
「ご機嫌ナナメだな?龍太郎」
「あ〜…別に」
通学路を背中を丸めて歩く若月の隣りで、元気良く笑顔を向けるのは、同僚で体育担当教師の桜川鷹士。
「ま、まさか体の具合でも悪いのか?」
「違う違う……単なる二日酔い…あんま耳元で騒ぐなよ…鷹士」
飲まなきゃ寝られなくなったんだよ…なんて言ったら…問い詰められて、マジで殺されかねんからな…………
はぁ……アイツの熱…うつされちまったのか…?
若月は昨日のリョーマを思い出し、体の奥が疼いた。
やっぱり唇くらい奪っときゃ良かったな……
些細な微熱が、若月の中に更に熱を与えていた。想像しているよりも遥かに熱く。
それがリョーマの悩みのタネになるとは、この時はまだ気付いていなかった。
おわり。