同じ場面を見ていても
同じ場所を歩いていても
同じ時間を生きていても
俺から一瞬でも離れたら殺す、から

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草木も眠る丑三つ時
こんな誰もが忌み嫌い眠りに費やすこの時間帯に
死にかけている奴がいるとすれば、それは紛れも無く俺だ
頭のオカシイ通り魔に会ったわけでもないのに、死にそうなのは目の前に立つ男が原因なわけで
クスクスと笑う顔はいつものソレと変わらないが解説がいらないほど、違う
左頬に赤い粘着性のある液体 そして右手に握る鉛色にも同じ赤色 清潔感の漂うシャツにもまた同じ赤色
・・・・・・・・・・・・・ああ、今理解したよ
その赤いのは俺の血だ

「痛いか?痛いだろうなぁ、背骨の辺りから右に3cmズレたところと内臓を刺したからな
・・・・・・まぁ、罪にはいつだって罰が下るように出来てるから仕方ない」
罪?俺に何の罪があるっていうんだ?
これでも真っ当な人生を歩んできたと思ってる 一回も警察のお世話になったこともない
ちくしょう、目の前の人間の考えていることが分からない 視界も徐々にぼやけてきてやがる
「・・・・・罪、だの罰だの、一体・・・どういう意味だ?手短に、ゴホッ・・!説明しろ・・・」
血で舌がもつれ上手く喋ることができない 早く救急車呼べよこのクソ野郎
「なんだ・・・・まだ自覚がないのか・・・・・・手間のかかる奴だな・・・・・・まぁ、そんなところも愛してるんだけど」
あぁ、どこがいつもと変わらない笑顔なのだろう
口元は限りなく笑っているが 目が、普通じゃない
「安心しろよ、俺はちゃんと死体も愛せるから どんなお前でも俺の気持ちは変わらないよ」
漫画やアニメなどの空想じゃあるまいし、最期に見た光景がナイフの切っ先と歪んだ笑顔だなんて、な
ほんと、笑えるよ


「お前が全て悪かった、とは言わないよ 一瞬でもお前から目を離した俺がいけなかった それは俺の「罪」だ
 そして「罰」はこれから受けにいく、というよりはまぁ、果たすといった方が正しいか?
で、・・・お前の罪は俺を忘れて3分と54秒、あのゴミクズどもと話したことだ、罰は・・・もう分かっただろ?」
体はもう動かすこともできないので目線だけ向ける
何ともいえない幸せそうな顔がかえってきた

草木も眠る丑三つ時
俺は殺された
・・・・・恋人の手によって

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