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□聞かせて、恋心
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明け方、ふと目が覚めた。

そっと、そっと

起こさないように彼の胸に擦り寄る。


大好きな、大好きな彼と
一緒に住むことを許されたわたし。

今でも思うの。


嘘なんじゃないかって。

嘘つきな彼の、いちばん大きな‥とっても幸せでとっても残酷な嘘じゃないの?


夢なんじゃないかって。

もしも夢なら‥醒めないでほしい。

永遠に。



寝てる彼の顔をそっと覗き込む。

(綺麗な顔‥)


秋山さん、貴方の心に私は居ますか?

眠りの中でも、私は居ますか?


人を疑うことを知らない私だけど
あまりに幸せすぎて、時々ふと不安になる。

信じてないわけじゃないんです。

なんだろう、
判らないけれど、無性に。

とにかく無性に不安になる時があって。


追いかけてるのは私だけ。
こんな気持ちになってるのは本当は私だけなんじゃないかって。

思ってしまうんです。


いつも追いかけているのは私で
夢の中でも、いつも秋山さんだけを追いかけてる。

貴方以外、見失いそうな程。



秋山さんの夢の中に、私は居ますか?




こんな風に一人 目が覚めたときは
色々考えてしまって、幸せなのに‥落ち込む。

疑うことはしたくないのに、何処かで疑ってる自分に。

夢なんじゃないかと本気で考えてしまう自分に。


またそっと、彼の胸に擦り寄った。

怖い
こわいよ‥

また突然、不安の渦に呑み込まれる。

目の前の彼が 涙で少し、霞んで見えた。



「   」


彼が何か言った気がして、

ふと、彼を見上げる。


眠ったままの彼の腕が伸びてきて、ぎゅっと抱き寄せられた瞬間、


「‥なお・・・」

今度ははっきり、声が聞こえて。

涙ひと滴、頬を伝った。





−眠りの中でも、貴方の心に私は居ますか?



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