text1

□朱に交われば赤くなる
1ページ/1ページ


「アッキー久しぶりじゃぁーん!」

街中で偶然、ほんとに偶然秋山に会った。

あ、ちょっと。そんなに面倒臭そうな顔しないでくれる? ため息!つかないでくれる?
フクナガちょー傷つくんですけど。

「何か用か?」

「用が無きゃ声かけちゃいけないってゆーのかよ!この街中で偶然出会った奇跡に声くらいかけたっていいじゃんか」

「出会いたくなかったがな‥」

ちょっとちょっとちょっとー!

「冷たいよ。冷たすぎるよアッキー。」

あ、またため息。

ううううううううううう‥



でもさ。
なんだかんだ言って秋山、足止めてくれてんだよね。

昔だったら絶対一瞥して無視だっただろうけど。
もしくは、ゴメンナサイと言いたくなるような顔されてこっちが退散するんだけど。

変わったよなぁ。

やっぱあの子のおかげ‥かな。



「直ちゃん元気?」

「何で俺に聞く。」

「だーって昔から直ちゃんのことは秋山に、秋山のことは直ちゃんに聞けって言うじゃんか〜。」

「・・・・・・・。」

ちょっと!ここは突っ込むとこでしょうが! あーもう、ノリ悪いなぁ。
直ちゃんだったら顔真っ赤にしたり、慌てて否定してドツボに嵌ったり、とにかく面白い反応が返ってくるのに。

「どうせ電話やメールして知ってるだろうが」

うん知ってる。
あの馬鹿正直な子は何回も何回も何回も騙されたこと忘れて、何故か俺のこと普通にお友達だと思ってるからね。

まぁ俺も。
今じゃ妹みたいに、思ってるけど。


‥とにかく俺等 ちょー仲良しなんだから!

「妬いちゃう?妬いちゃってる??」

「んな訳あるか」


あ、眉間にシワ。

そろそろやめとこう。
ここに直ちゃん居ないから何されるか判んないし。


‥って、ん?電話?

秋山の携帯、鳴ってるじゃん。
じっとディスプレイ見て‥取らないわけ?
あ、とるんだ。


‥秋山 ‥それ絶対直ちゃんでしょう。

直ちゃん以外だったら虫けらの如く無視するに決まってる。
決まってるったら決まってる!

俺が横に居るから取るの一瞬躊躇したけど、直ちゃんの電話を無視することなんて出来なかったんだよなー。
判るー判るよ〜俺の頭脳を以てすれば相手が秋山だろうと判っちゃうんだよ〜。

「どうした?」

俺に対してとは180度違う秋山の優しい声。

さっきの俺様の素晴らしい推理、全部無駄じゃん!
その声聞いたら誰でも相手は直ちゃんだって判っちゃうじゃん!

相変わらずのポーカーフェイスだけど、内心は直ちゃんの声聞けて舞い上がってるんじゃないのー?
どんなに凝視しても表情、変わんないけどね!悔しい。

日頃やられてばっかの俺だからー? ちょっとは秋山の弱み握りたい訳よ。

直ちゃんに甘える姿ちょー見たいんですけどー!
こう‥秋山が直ちゃんにごろにゃ〜んって‥

無いね。ごめんなさい。俺の脳内ごめんなさい。


とりあえず落ち着いて、秋山の会話に集中した。当然電話の向こうの声は聞こえないけれど。


「いちいち断らなくてもいいよ。 カギ‥持ってるだろ?」

秋山の声が、一段と小さくなった。
電話を取るとき少し離れた場所へ行って背を向けたけど。
少しずつ少しずつ近寄りつつ俺様の全神経を超集中させたおかげで聞こえた、確かに聞こえた言葉は‥

カーギーーー!!!!?

小声で言うってことは、合鍵?合鍵なの?

秋山が‥鍵渡したの‥?
うけるー!どんな顔して渡したか想像もつかないけどうけるー!
貰った直ちゃんの顔は想像できすぎちゃってうけるー!!


更にゆっくり近寄って秋山の顔が見える位置へ移動したら、秋山は突然俯いた。

「・・・・・っ」


ちょちょちょちょ!
直ちゃん、何言ったの!?

秋山俯いて顔隠したけど、俺は見た、確かに見た。

一瞬だったけど、秋山の顔が緩んだ瞬間を。


「アッキー、顔、緩んでるよ。」

うぷぷっ。
俺の前じゃ表情崩さないようにしてた秋山にあんな表情させるなんて。

天然馬鹿正直娘、やるじゃーん。 うぷぷ
 
俺が声かけた時に、はっと顔あげて素に戻した秋山の顔もまたうけるー。


「あ!ちょっとアッキー!」

秋山が背を向けてスタスタ歩きだした。 逃げるなー!
でもま、そろそろ2人の世界にしてやるか。弱みは十分握ったしぃー。
っていうか直ちゃん居ないから電話切った後どんな目に合うか判んないし。引き際が肝心なんだよ。学習した。

随分先へ歩いていった秋山がチラリとこっちを見た。

「お幸せにね〜〜〜〜」 

大きな声で手を振って祝福する。
俺のニヤニヤ顔はしばらくおさまりそうにない。

だって、ドヤ顔王子がだよ?あんな表情するんだもん。

あはは〜


いつの間にかほっとけなくなってた彼女の嬉しそうな顔を思い浮かべて、スキップしそうになってる自分に気付き苦笑い。

ほんといつの間に、全力で応援してるんだか。




---------------------------------

ずーーっとやきもきしてたけど、やっとそこまで辿り着いた。




[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ