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□ぬくもり
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「秋山さーん」
「秋山直さーん」
病院の待合室で真剣に雑誌を読んでいたら
「おい‥」
隣から彼の声。
「何ですか?」と顔をあげてみれば、彼は視線を移動させた。
何だろうと思いつつ視線の先を追ってみると看護師さんが居て、「秋山直さーん?」 と呼びながら待合室を見回していた。
自分が呼ばれていたのだとやっと気づき
「はいぃぃぃっ!!!」
思わず大声で返事をして立ってしまい、周りの視線、独り占め。
ああ‥やっちゃった‥
赤面しつつ彼を見ると
「そろそろその名前に慣れろよ‥」
と呆れ顔でぼそり。
「すみません‥」
慌てて看護師さんの元へ行き謝ると
「ここは苗字が変わりたての方がよくみえる場所ですからね。結構あるんですよ。」
ふふふと笑いながら答えてくれた。
振り返り待合室を今一度見渡すと幸せそうな顔の人達が沢山居た。
そして彼を見れば、さっきまで私が読んでいた育児書を手に取り優しい顔でこっちを見ていた。
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ぬくもり、しあわせ。