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□遂に夢にまで
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彼女の笑った顔が大好きだった。
「秋山さん」
俺を呼ぶ時の、彼女のはにかむような笑顔が好きだった。
人の優しさや幸せに触れたときの微笑みが好きだった。
彼女の満面の笑みが大好きだった。
遠く離れても、彼女の幸せそうに笑った顔を思い出すだけで生きていける。
本気でそう思っていた。
なのに
初めは思い出せていたはずの彼女の笑顔が‥
思い出せない。
思い出すのは眉を下げた悲しそうな顔と泣き顔だけ。
「秋山さん‥」
君の幸せを願って離れたんだ。
泣かせるためじゃない。
例え夢の中でも。
君にはずっと、笑っていて欲しいのに。
そう思うことすら罪だと、許されることはないとばかりに
夢に見るのは彼女の泣き顔だけ。
夢の中で彼女を泣かせているのは‥俺か?
俺の存在は彼女を泣かせるだけなのだろうか。
やはり、
俺は・・・・・・
『遂に夢にまで』
「秋山さん、帰ってきてください‥」
彼女の思いは、届かない。