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□少女革命
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「直、あんた好きな人出来たでしょう」
ぎくり、とした。
少し前に出来た大学の友達、菅崎志緒ちゃん。
可愛い容姿なのにかっこいい女の子。
「何で判ったの?って顔。私に隠し事できると思うなーっ!」
くすぐられて涙目でギブアップ。
「あはは、ちゃんと言うから許して〜」
でもなんで判ったんだろう?と考えていたら
「最近可愛くなったもん。やたらファッション雑誌見てるしさ、気付きますとも!」
得意顔で答える志緒ちゃんに思わず笑ってしまった。
志緒ちゃんはやっとできた、心から信頼できる友達。
でも・・・あのゲームのことは話せなかった。
秋山さんとの出会いはライアーゲーム。
好きになった人のことを話そうとすると、ゲームの話が必要不可欠で。
志緒ちゃんにはずっと言い出せなかった。
でもいつか、言う時の為にと考えていた嘘をついた。
心がちくり、と痛むのを我慢して。
「えっと、私が騙されちゃって困ってるときに助けてくれた人でね‥」
一回戦、二回戦、敗者復活戦‥いっぱいいっぱい、助けて貰った事を思い浮かべながら話を進めた。
『嘘をつく時は、なるべく嘘をつかないようにすることだ』
上手な嘘の吐き方を尋ねた時の秋山さんの言葉。
どういう意味か判らなくてぽかんとしていたら、真実の中に嘘を少しだけ入れるといいってことだと笑いながら教えてくれた。
こうして秋山さんの事を思い出すだけで、心臓がどきどきする。
ここに秋山さんはいないのに、判っていても抑えられない。
「でね、胸がぎゅーっとして、苦しいの。 嬉しいのに、苦しいの。」
少しだけ嘘をついてしまった出会い、好きなところ、そして今の気持ち。
なかなかうまく言葉にならない想いも、言葉を捜して伝えていった。
うんうんとにこにこしながら聞いてくれた志緒ちゃん。
ゆっくりだけどやっと一通り話し終えた時、
「直も大人になったねー」
しみじみと言われた。
「直と恋愛話出来るのはいつになるのかと心配してたんだから」
「え、私の恋愛話なら前にしたよ?」
初恋の彼、憧れの先輩、同じクラスだった男の子、、、
皆と比べると確かに数少ない恋愛話だけど何度か色々話したんだけどな。
「あれは本当の恋とは言わないのよーだ」
「本当の恋?」
「そうそう、燃え上がるような恋!」
よく、わからない‥。
でも確かに今までとは違う気がする、この想い。
ずっとずっと秋山さんのことを考えてる。
嬉しくて、苦しくて、楽しくて、辛い。 これが本当の恋‥なのかな。
「今までみたいな憧れの延長じゃなくてね、さっき直が言ったみたいにさ、嬉しいのに苦しいとか。そんな感じ。
嫉妬もするし、好きって綺麗な気持ちだけじゃ済まなくなるよ。」
好き以外の気持ち‥。
「なーんてね、人生の先輩じゃないし私もよくわかんないんだけどっ!」
笑いながら肩を軽く押されたので、「もぉ〜!」と押し返して笑いあった。
「でもね、多分この恋は実らないんだ。」
秋山さんは大人だし、頭がいいし、かっこいい。
外見も中身もまるで子供のような私には不釣合いなこと、私が一番判ってる。
今私の傍に居てくれるのは、私があまりにも危なっかしくて放っておく事ができないから。
優しい秋山さんだから、私を見捨てないで助けてくれる。
ゲームが終わってしまえば、会うことも無くなるかもしれない。
「んじゃ燃えカスになるまで頑張りなよ」
「燃えカス‥」
何それ、と二人で思いっきり笑った。
「燃えカスになった時には慰めてあげるからさ、何にもしないで諦めないで、頑張ってみなよ。
結果は行動してみないと誰にも判らないわけでしょ?」
そうかもしれない、と思った。
このままじゃ、ゲームが終わったら秋山さんとはお別れになる。
それは嫌。
頑張らずに諦めるより、頑張って諦めたほうがいいに決まってる。
うん。
頑張ろう。
頑張って頑張って、燃え尽きちゃったその時には、
志緒ちゃんの笑顔で慰めてね?
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『嬉しさの先には絶望』の前話。