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□甘い甘いキャンディーをひとつ
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「のどが痛い、です。」

顔をしかめながら彼女が彼に訴える。

「・・・俺も」





今季一番の寒さですという言葉をここ数日、何度もお天気お姉さんが伝えていた。

季節は秋から冬へと替わり、日を追うごとに寒さは増していく。

特に明け方は窓を閉め切った部屋に居ても冷え込むようになった。


「あ、秋山さんがいつまでも服着させてくれないから‥っ!」

「しがみ付いたまま寝て離してくれなかったのは直だけど?」

「ううーっ」

彼に遣り込められたことと喉の痛みに彼女は再び顔をしかめた。

彼女は再び何か言おうと口を開けるものの、諦める。
喉が痛かったからではなく、勝てるような言葉が浮かばなかったからであるが。

(こういう時の秋山さんには絶対勝てないんだもん‥)


少々拗ねながら彼の元から離れ、彼女は何かを探しに行った。

少し経って彼の元へ戻ってきた彼女の手にはのど飴。

「美味しいしのどに効きますよ。秋山さんもどうですか?」

そう聞きながら彼女は飴を彼の口の方へ運んだ。


「いや、俺はいいよ。その飴かなり大きいし」  

(普通のよりかなり甘ったるそうだし)


「えー美味しいのに‥」 

(お口にあーんってしたかったのに‥)


然も残念という表情で飴を見つめると、彼女は自分の口へと運んだ。


左の頬がぷくりと膨らみ、彼女の顔は残念な表情から一転、笑顔になる。

その顔の移り変わりを見て秋山は思わず笑った。

「ほんと旨そうに食うよな」

「だって美味しいですもん!」

こんなに美味しいのに秋山さんは食べないなんてと口を尖らせる彼女に、秋山は頬を飴ごとムニッとつまんだ。

「なにふるんでふかー」

ついつい苛めたくなるような可愛さの君に気が付いたら手が伸びてたんだけど。
なんて言える筈もなく。

「ほっぺがつまんで欲しそうに膨れてたから」 と笑った。


「で、どう?喉の痛みはとれてきた?」

「ちょっとは治まった感じですよ。」

「へぇ」

「あ、やっぱり舐めたくなったんじゃないですか?」

ニッと彼女が笑い彼の顔を覗き込んだその時、秋山は直の頭を寄せて口づけた。

「んっ‥」

少しだけ開いた唇に舌先を伸ばして侵入を試み、口内で飴を転がす。

「っ‥ぁ‥」

舌先で口内を隅々までなぞると、彼女の舌を求めた。
彼女もそれに応じるものの、口内に飴が残る彼女の動きはいつも以上にぎこちない。

「直、飴こっちに頂戴」

「え・・」

初めは意味が判らなかった彼女だが、秋山の言葉を理解すると恥ずかしげに俯く。
おずおずと首に手を回しゆっくりと顔を寄せると唇を重ねた。

飴玉を舌先に乗せ、軽く開けた秋山の口へと押し入れる。
秋山は直の舌と飴を同時に絡めとり、再び舌を差し入れると彼女の口内を味わった。

止まらない口づけ、求めれば絡められる舌。 徐々にお互いの呼吸が荒くなっていった・・・


どれくらいそうしていただろうか。
しばらくすると秋山はようやく彼女を解放した。

すっかり力の抜けた彼女の姿を満足げに見ると再び口づけ、飴を返す。

「もうこれで十分」

口角をあげ満足そうな彼の姿を見上げ、彼女は両手を頬に当てるとひとつ大きな深呼吸をして呟いた。

「今度は熱が出てきたみたいです‥」


「じゃぁ今日は1日寝てないとな」
「えぇ?」

抱き抱えられベッドへ連れて行かれる彼女。

彼の企みに彼女は成す術もなく。

長い、1日がはじまる。









(思った以上に甘かったな、この飴‥)





甘味を増したキャンディーだもの。 








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年齢制限つきは、大人な関係になってる秋直だからであります。
15禁でも中身全然じゃないかという苦情はお受けできません(笑)

大人な関係の秋直を読みたくない場合は年齢制限付きを読み飛ばしていただきますよう。



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