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□君にもう一度
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二年──。
君と離れた期間。
実際にはもっと長かったような気がする。
あの事件で既に沢山のものを失っていた自分。
ライアーゲームが終わったと思っていたあの時、僅かに残っていた何もかもを捨て、旅立った。
何もかもを捨てたつもりだった。
捨て切れなかったのは君への想い。
捨てなければと思うほど、君を想う時間は長くなっていく。
君が好きなんだと。
離れて初めて自覚した。
母さんによく似た馬鹿正直な君。
何度も何度も騙され泣く君を、見捨てることができなかった。
助けられなかった母さんの代わりだと
そう、思っていたのに。
ゲームが終わったあの時、もう元詐欺師が傍に居る意味は無くなった。
意味が無くなったどころか、元犯罪者なんかが傍に居たら迷惑しかかけないであろうことは予測できた。
君は透明で、何処までも澄んでいて。無限の可能性と輝く未来が待っている。
現実の世界に戻れば彼女を守る役目を担う奴は他に居る。
非現実的な騙しあいのゲームだったからこそ、傍に居ることを赦されていた自分。
‥俺の選択肢は1つだった。
君を守る──。
義務感と償いの気持ちで動いていた、はずだった。
君から離れて自分の本当の思いに気付いても、もう遅い。
否、気付いていたとしても彼女の傍に居ることなんて出来なかった。
‥そんなことは赦されていない。
所詮俺は離れたところで君を思うことしか出来なかったんだ。
あれから二年経った今、手元にあるのは黒い封筒。
君の元へも届いただろうか。
四回戦の招待状を暫く見つめ、矛盾した2つの思いと葛藤していた。
君は絶対に参加するな。
でも、、、君に会いたい。
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僅かな希望を胸に、あのゲームへ