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□優しい嘘
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あきやまさんが‥

いない。





どこを探しても。






『優しい嘘』




自立しなきゃいけないって、
ゲーム中からずっと思ってたのに‥。

秋山さんが居なくなって気づく。


(わたし‥もう一人じゃダメだよ、秋山さん‥)


じわり

秋山さんのことを想うだけで

すぐ目の前にあるはずの物が見えなくなった。


(泣いちゃだめだ‥。)



強くならなきゃ、

涙なんて流さないようにしなきゃ、

我慢‥しなきゃ。



ずびっ


ああ‥鼻まで詰まってきた。

結局我慢なんて出来ずに こぼれた、涙。



(秋山さん‥)










些細なことで、喧嘩した。


喧嘩というより、ちょっとした意見の食い違い。

で、彼女がちょっと拗ねただけのこと。



その姿すら可愛いと思ってしまった自分がほんの少しだけ嫌になる。

直には悪いけど、ちょっとだけ仕返し。



「明日から出張だから、一週間。」

「‥えぇ!?」

「朝早いから寝る。 おやすみ」



急遽決まってしまった出張は本当。

明日早いのも本当。


急だから言いづらいと思っていたけれど、まさかこんな風に伝えることになるとは。












「うそ‥」



後悔して

後悔して

なかなか寝れなくて。


やっと寝れたと思ったら寝坊した。


起きたら秋山さんが、居ない‥。



結局謝ることも出来ず、

お見送りも出来ず、

これから一週間‥


既に挫けそうだった。










あきやまさん、会いたい。


ああまた、泣きそう。

泣いちゃだめだ‥。




秋山さんのこと、思うだけで泣けてくる。

なんであんなこと言っちゃったんだろう。


早く会いたい。

ぎゅってしたい。

ぎゅって、してほしい。



‥して、くれるよね。

呆れて、嫌いになったりしてないよね?

ひとりになってから、繰り返してきた自問自答。


結局我慢なんて出来ずに涙が溢れた。


(秋山さん‥。)






「‥また泣いてるのか?」



部屋の入り口から聞こえてきた声に、慌てて振り返った。


「‥嘘‥なんで?」







秋山さんが出かけてから、2日しか経っていなかった。

2日しか。


その2日がとてつもなく長く感じたのだけれど‥。


一週間よりははるかに短い。



何でもいい。

「‥秋山さん!」

彼の元へ走り、抱きついた。

私の背中へ回された腕に安堵する。


「おかえりなさい。 あと‥ごめんなさい。」


涙、止まらない。

我慢することなんて忘れてしまった。










「そういえば‥予定が早くなったんですか?」


一週間の予定が2日で帰ってきたことに、
嬉しいけれど困惑中といった感じの顔で質問された。


「いや、予定通り」


元々2日の予定だったんだ。


ちょっとした仕返し。

と、

ちょっとしたサプライズ。

2日は長いけど、1週間よりは短いだろう?



伝えると、もう!と言いながら抱く手を強めた君。


君の、その笑顔が見たかった。




ごめんな、嘘吐きで。










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明るくしてみましたが

(この二日、ずっと俺のこと考えてくれてただろう?)

って病み山さんが裏には居たりして。


傍に居ない間も直ちゃんの心を占領するために。

一切連絡しないとか。
実は声聞きたいけど耐えるとか。
ラストはそっと帰って落ち込み直ちゃん観察するとか。
やっぱ彼女には自分がいないとダメだと思うとか。
それを理由にまだ傍に居ることにするとか。

全ては彼の策略だといいよ。




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