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□罪悪、そして
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ごめんね、お母さん
僕が居るから、体弱くても必死に働くお母さん。
ごめん。
『深一、ご飯にしよっか』
いつも笑顔のお母さん。
ありがとう。
大きくなったら、大人になったら絶対、楽させてあげるから。
もう少し、待ってて。
*
母さん、ごめん。
何でこんなことになったんだろう。
気付かなくてごめん。
一番近くに居たのに‥
ごめんね母さん。
悔やんでも、
悔やみきれない。
*
母さんごめん‥。
何度この言葉を呟いただろう。
母さんが必死になって、その文字通り死を選んででも行かせてくれた大学。
そこで得た知識を犯罪に使ってしまった。
母さんを貶めたあいつらを許せなかった。
話す相手も誰もいないこの場所。
口を開けば贖う言葉しか出てこない。
ごめん‥
*
母さん。
馬鹿正直でいつも笑顔な奴が今、隣に居る。
ごめん、母さん。
俺だけ幸せになって、ごめん。
「深一、幸せになりなさいね‥」
「‥直」
「って言ってると思いますよ、お母さん」
「‥そうだな」
「秋山さんのお母さん、私絶対、秋山さんのこと幸せにしますから!」
「おい」
「安心しててください!」
「普通逆じゃないか?」
「ふふふ、前に秋山さんがお父さんに誓ってくれましたから、お返しです」
母さんの墓前、隣に直がいる。
『お母さんの願いは、秋山さんが幸せになることですよ』
母さんの幸せを奪って、前科者になって。
自分は幸せになる権利なんて無い。
そして彼女を幸せにする権利なんて無いと、全てを遮断していたあの頃。
真っ暗な世界に居た俺に光を差してくれたのは、脆そうで、でも誰よりも強い彼女だった。
「私が秋山さんを幸せにします!」
「俺が、君を幸せにする」
「二人で、幸せになりましょう」
「‥そうだな」
手を繋ぎ帰る。
今日から、同じ家へと──