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□溶け合ってひとつに
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「あっ‥」

その声の大きさに、彼は慌てて彼女の口をくちづけで塞いだ。

ここは防音設備なんて整ってはいない。

むしろ家賃と建ってからの年数から察するに壁はかなり薄い方であろう秋山の部屋。


動きを止め、唇を舐めとると

「声、大きい」

と、そっと小声で彼女を窘めた。

「すみま‥せ‥」

呼吸を荒くし答える彼女の唇を再び奪うと、動きを再開する。

「んふ‥」

彼の動きに合わせて直は唇の隙間から声を漏らした。


抱き合った当初は痛さと恥ずかしさからぎゅっと目を閉じ唇を噛み締めていた彼女。

今では与える動きに無意識に応えるようになった。

以前は閉じられていた瞳は、熱を帯び秋山へと向けられる。

そんな彼女の姿を見下ろし視線を絡めると秋山の口角は自然に上がった。


出会った時から変わらず愛しい彼女。

無垢な少女を女へと変えたのは自身であると、秋山は目の前の彼女を見て悦んだ。



「ああっ‥」


「ご、めんなさ‥」


再び思わず漏れた官能の丈。

直は自身の手を口元へ持っていき手の甲を咥えて声を耐える。


それでも時折荒く吐かれる息と共に声が零れた。


その声を出させてしまうことと、出てしまう声を抑えさせなければいけないこと、どちらが悪いのか。

前者は男としては喜ぶべきことであり、後者は男として恥ずべき状況である。

自身が限界に近づくのを感じながらも、秋山はひとつの考えに行き着いた。





「んっ‥」

指や甲を咥え無意識に綺麗な手を傷つけてしまいそうな直の手首を掴むと、秋山はその腕を横へずらしてベッドへと貼り付けた。

空いている一方の手は彼女の髪を緩りと撫でた後、指を埋め頭を抱く。


秋山は顔を寄せ再び口づけると、深く舌を入れた。

どちらのものか判らなくなるほど、深く ──。


彼女の手が秋山の頬に伸びる。

ベッドに貼り付けている腕もピクリと動いたので、彼は彼女の腕を開放した。


直の両手が彼の頬を撫で、首を滑り、髪に埋まる。


絡み合う舌、お互いの髪に埋まった指に無意識に込められていく力。

互いが相手を求めていた。



「はっ‥あ、あきやまさん‥」

唇を離し熱を帯びた瞳を秋山へと向ける。


「すき‥・すきです‥」

「俺も、好きだよ・・・ずっと。」


そして再び、深く、深く ──。

互いの体は更に熱を高めていった。










「引っ越そうと思うけど・・・君も一緒にどうかな。」

彼女は驚き目を大きくしたが、やがて満面の笑みを浮かべた。






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