text1
□hot chocolate
1ページ/2ページ
まだまだ寒いとはいえ、晴れた昼間は幾分か温かくなってきた季節。
沢山の店がピンクや赤のハートでデコレーションされている、バレンタイン当日。
秋山は一人、行く当てもなく街を歩いていた。
(いくら俺が疎いっていっても‥外に出れば気付くよなぁ)
今朝の彼女の落ち着きの無さを思い出し、口元が緩んだ。
『秋山さん、今日は天気もいいですし何処かにお出かけしないんですか?』
『え?一緒に? え‥と、あ、頭が!頭が痛いので私は家に居ます』
『だ、大丈夫です。大丈夫なので出かけてきてください!』
『ええ? えと、寝てればすぐに治りますから!』
相変わらず嘘と隠し事が下手な彼女。
気付いてはいるものの、彼女の計画には自分が居ては困るのだと察し騙された振りをする。
一緒に住み始めて初めてのバレンタイン。
我が家に帰れば甘い香りと彼女が迎えてくれるはず。
秋山は帰った時にどう反応すべきか、考えながら街を歩いた。
(それにしても‥いつ帰ればいいんだ?)
→