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□ふたりの、印
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両手でぎゅっと自身を抱きしめる彼の胸元に頬を寄せ、心音を間近で聞く。

幸せだな。

直は心からそう思えた。


初めは恥ずかしくて何も考えられなかった素肌同士が触れ合うということ。

今は抱き合うだけで心が満たされていく。

こんな幸せなことがあっていいのだろうかと思うほどに、彼女は幸せな気分になれた。


ただ、触れ合うだけ。

とても簡単なことなのに一人では感じることができないこの幸せ。


秋山さんが居てくれて良かった。

そしてこの幸せを感じさせてくれるのがあなたで良かった。


直は彼のぬくもりを文字通り肌で感じていた。


もぞもぞと動き、直は秋山の顔を見上げた。

男の人に言うと怒るかもしれない、

そう思いながらも彼女は目を閉じる彼から目が離せないでいた。

(綺麗‥。)

そんな言葉がよく似合う、とても素敵な人。


じっと見つめていたら、数時間前のとても色っぽい彼の表情を突然思い出し直視できなくなった。

俯き、彼の胸に顔を埋める。

おでこをつけて彼のぬくもりを感じ冷静さを取り戻す。

俯きおでこをくっつけると、自然と自分の胸元に目がいった。

「‥!!」

そこには無数の赤い印が散らばっていた。


彼がつける所有の証、自分のものだと言われているようで直は好きだった。

印をつける彼の表情、僅かな痛み、全てが愛しい。

ただ、途中まで自身が記憶していたより遥かに多い自分の胸元の赤色に彼女は戸惑う。

与えられる熱に浮かされていた間に、所有の証は次々増えていたのだ。



(もう、秋山さんったら‥)


そんな事を思いながら、赤い印を見つめ微笑んでいた。




あなたの、印





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