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□青年の長い夜
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秋山の家で直がご飯を作り、一緒に食べる。

それが2人の、当たり前のような光景になっていた。


多くを語る事は無いけれど、作ったご飯を残さず全部食べてくれる彼に。

嬉しそうにご飯を作り、楽しそうに日々の事を話す彼女に。


お互いが幸せを感じていた。



「迷惑かけっぱなしですし、何かお礼がしたいんです!」

何度か繰り返されたその言葉。

ある日遂に熱意に押し切られた秋山は渋々了承し、直がご飯を作ることになった。


二人とも、一人で食べるご飯の味気無さを知っていた。
味気ないご飯に次第に慣れてしまったことには気付かないふりをしていた。

しかし誰かと食べるご飯の美味しさを思い出してしまった。

以来何度となく続き、気付けばそれが日常となって今に至る。


この日もいつも通り食事と その洗い物も済ませた直が、突然思い出したように声を上げた。


「あっ!」

「‥どうした」

「テレビ!」

慌ててテレビに駆け寄り、電源を入れる。

「あ、良かった間に合ったぁ」

画面に映し出されたのはCMで。時刻を見ると20時59分。

時間的に、直が見たい番組が始まる直前のようだった。

「何見るんだ」

「見逃しちゃった映画、今日やるんですよ!」

泣ける映画の、超大作なんですよ〜。 地上波初ですよ!

と興奮気味に直が続けていたが『超大作』の部分が気になって番組欄を確認した。


"終了 23時54分"


秋山は軽い目眩を感じた。

(こいつは男の部屋に来て危機感ってものが無いのか!?)


かといって彼女が楽しみにしている映画が始まるまで あと1分を切った状況で追い出すわけにもいかず。

目を輝かせる彼女を見ながらそっと、これからの自分を案じ深い溜息をついた。













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この後 感動映画で泣き疲れて寝る直ちゃん。 (お約束)




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