‡A la carte‡

□図書委員長の憂鬱
1ページ/1ページ


最近、綾瀬川がサボらずに当番の仕事を引き受けてくれる。

彼がくると、いつもは閑散とした図書室が人で賑わい活気に溢れる。

この際、小さな歓声や悲鳴は目を瞑(つぶ)る。

委員長「−−−本当、凄い人気だな。綾瀬川」

彩人「そう?」

本人は、あの観客に見向きもしないで、熱心に読書に勤しむ。

委員長「ところで、ナニ熱心に読んでるんだ?」

彩人「ふふ」

静かに笑い、返事を返さない綾瀬川。

委員長「?」

不思議に思い本を覗き込む。−−−と、そこには………

『痛く無い、男同士のS〇X』

の文字!

委員長「あ、あああやあや綾瀬川!!」

彩人「しっ。委員長、声が大きいよ。静かにね?」

唇に人差し指を添え『しっ』とジェスチャーする綾瀬川にまた、周りが色めき立つ。

委員長「なっなっ何て本読んでるんだ!?」(小声)

彩人「ふふ。でもカバーしてるし、覗き込まなきゃ分からなかったでしょ?」

まあ、確かに……

身を乗り出し、綾瀬川の背後からでなきゃ分からない。

読んでる本人はまさかこんなモノを読んでそうにも見えない位、悠然としているから。

委員長「綾瀬川…男が好き…なのか?」

彩人「ん〜。好きになった人が、たまたま男だったってだけで…」

委員長「そ、そうか…」

いきなりのカミングアウトに正直ビビった。

綾瀬川なら、例え此処が男子校でもモテるだろうけど。

同じ男から見ても、綾瀬川は見惚れる美貌の持ち主だ。色気があるというか…

『しかし…相手って…誰だ?』


皐「チ〜っす。本返しにきました」

彩人「ああ。いらっしゃい」

彼は咲坂 皐くん。一年下で、彼も中々の男前だ。

綾瀬川と二人並ぶと絵になる。

一部の女子の間で、色々な話のネタになってるらしい。

家が茶道の家元で、忙しそうにしていたからか、全然来ることは無かったのに、何故か最近図書室によくくる様になった。

皐「この本なんスけど…」

彩人「ああ、その本なら…」

綾瀬川がカウンターを立ち、咲坂を案内する。

人も引き俺達三人だけになり、後はデータを打ち込み鍵を閉めるだけ。

椅子に腰掛け、作業しようとした瞬間−−−

ガタッ!バサバサッ!!

物が落ちる音が響いた。

委員長「?…綾瀬川?」

大きな音がしたのに綾瀬川達の反応は無い。

不思議に思い、広い図書室を見回る。

−−−−この時、行かなきゃ良かった。と後になって後悔するハメになるとは知らず。

「−−−っ!−やめっ−」

『人の声?』

本の隙間から見えた−−ソコには−−

咲坂に迫る綾瀬川の姿があった。

皐「−−っ!ン!〜〜〜人…いてっ…からっ!」

彩人「興奮してる?ほら…ココも、ね」

半分ほど下ろされた、咲坂のズボンからは、男根が綾瀬川の手で扱かれ、厭らしいくヒクヒクしていた。

二人の唇が重なると濡れた音が、辺りを支配する。

『こっ!コレって!?』

綾瀬川の指が躯を滑る度、咲坂はビクビクと躯を震わせ、頬は紅色に染まり、瞳を濡らし熱い眼差しを綾瀬川に投げる。

同性の男が傍目(はため)から見ても、その姿は悦で色っぽい。

皐「…もっ…ンっ!…やめっ…」

『ど、どうする?どうする俺!』

立ち去らなければと慌てふためいた頭で分かっていても、目が離せ無くなり、足が動かない。

綾瀬川が下へ体を滑らすと咲坂の一物を喰わえ、ジュピジュピと淫らな音が聴こえた。

『く、く、口でしてる!?』

皐「んっ!…っ…はっ!…んっ…んっ」

咲坂の足は奮え、立っているのもやっとそうに見える。

綾瀬川がスルりと、後ろに手を回した瞬間−−

皐「ひっ!!…やめっ!〜〜〜っ!!」

咲坂の躯が弓なりに跳ね上がった。

皐「あっぁっ!やめっ…でる…からっ…はな…せっ」

咲坂の懇願に綾瀬川は素知らぬ顔をして、口を離さない。

皐「…んっっ…ンんっ…もっ〜〜〜っ!」

咲坂がキュッと唇を結び、小さく躯を震わせると肩で息をし、グッタリとうなだれた。

『っ!!のっのんっのんだ〜っ!!』

思わず出そうになった声を手で必死に押さえた。

綾瀬川が唇の端に付いた精液をペロりとした瞬間、目があった。

言葉の出ない俺とは対象的にニヤリと余裕で微笑む綾瀬川。

光速の勢いでカウンターに戻ったけど…

『バッチリ目が合った!!どうしよう!?』


皐「失礼しましたっ」

服を正した咲坂がひょっこり現れ、ニッコリ笑いドアを出た。

『俺が見てた事気づいてない?』

彩人「さっきの事…見てないよね?」

遅れて現れた綾瀬川が、カウンターに戻るなりニッコリ微笑む。

委員長「…えっ?だって…目があっ…て…?」

彩人「見て…無いよね?」

満面の微笑み。
の後ろには真っ黒なオーラを纏った、どす黒い悪魔が見えた。

委員長「みっ!見てない!ナンっっっにも!見てない!!!」

彩人「そっ。なら良かった」

暗に今日見た出来事は他言無用。忘れろと言っているのだ。

−−と、その時は思っていたが、実は少し違っていたのだ。

その後、綾瀬川は人の居なくなった図書室の俺の前で、嫌がる咲坂に仕切りに引っ付き倒している。

流石に他の人の前ではしていないみたいだが…

委員長「なあ、俺は勿論お前達の事、言うつもりも、見たいとも思わ無いけど、この間の脅しってナンだったんだ?」

彩人「脅し?」

キョトンと首を傾げる綾瀬川。

委員長「見ただろって脅したろっ!」

彩人「ああ。アレは聞いただけ。かな?」

無意識で腹黒か!!コイツ!

彩人「まあ。そう見える位腹が立ってたんじゃない?」

委員長「腹立つ?」

彩人「好きなコのあんな姿、他の人に見られてたんだからね」

……どうも、『してた行為』を忘れろではなく、『咲坂の感じてたトコロ』を忘れろだったらしい。

委員長「だったら、人の居る所でしないでくれ!!」

彩人「でも、刺激があって楽しいでしょ?お互いに」

と、綾瀬川はニッコリ微笑んだ。

−−−男同士の恋愛なんて正直分からないが、こんな訳分からんヤツに好かれた咲坂には同情する。

そして、今日も憂鬱な図書当番の日は始まるのだった。
 
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ