‡A la carte‡

□行方不明の恋心
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−−俺は兄が嫌いだ−−

いや、兄だけでなく家族全員が嫌いな気がする。

世間体を気にして離婚しない両親もプライドばかり高い姉も、自信家な兄も、我が儘ばかりの上の弟や問題ばかり起こす下の弟も……。

その中でも一番嫌いなのは兄だ。

頭が良くて何でも器用にこなし、顔も整っていて、外では完全無欠の兄が嫌いだ。


彼 諏訪部 叡樹はエスカレーター式の私学に幼少期から入れられ、その頃から四つ違いの兄と比べられた。

学校にはいないはずの兄の名はいつまでも名高く『諏訪部 悠樹の弟』が彼に与えられた名前だった。

大学院に残るか、父親のグループ会社に就職するか選択を迫られた時は、大学に残った。

父の会社に就職すれば、また兄と比べられ、親の七光りと言われ、実力で掴んだ物すら偏見の目で見らる。そんな考えが渦巻いていた。

ソレを実力だと認めさせるだけの力も自信も彼には無かったからだ。

父の会社以外に就職すれば良かったのだろうが、ソレは両親が反対した。
財閥の総帥である父の名誉を傷つける行為だから。

院の研究所では、それなりに親しい友人や教授も出来た。
最初の頃でこそ『諏訪部 悠樹の弟』だった彼だったが、数ヶ月もすると周りの人間も『諏訪部 叡樹(えいき)』として彼と接する様になっていた。

今では研究所が一番心安まる場所といって過言ではない。


「おい、叡樹。携帯なってんぞ」
「あ、ありがとう」

着信を見ると兄からだった。
  イヤな予感

「………もしもし」
『叡樹か。悪いが連絡があってな。正樹が警察に保護されてるらしいから、連れ戻してくれ』
「何で俺が…」
『私も父さんも今から外せない会議でな。悪いな』
「ちょっ!」

いつも言いたい事だけ言うと、一方的に電話を切る。
こちらの都合はお構い無しだ。

『正樹』と言うのは一番下の弟だ。
小さい頃から家出を繰り返していた。
でも、一時期はソレも治まっていたのだが、ある日を境にまた以前の生活。

いや、以前よりもタチが悪くなった。

中学に上がる頃には如何わしい連中と付き合う様になり、飲酒・喫煙・暴行沙汰。
俺達が知らないだけで、薬もしてるんじゃないかと思う。

金や女に関しては、アイツも金は持っているし、顔も良いので近寄る女はいるだろうから、あまり不自由はしていないようだけど…


「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」

 警察に着くと、深々と頭を下げる。
何故、兄弟というだけで俺がこんな事をしなければならない?

コイツは年は中学生だが、外見も中身も大人だ。

悪い事と知りながら、全部分かっててやってる。

「お前本当何考えてんだ!?毎回毎回迎えにくるコッチの身にもなれよ!」
「……ワリィ……」

反省するでも無く、ボソッと呟く弟に腹が立つ。
面倒な事は全てを俺に被せてくる兄にも腹が立った。

 叡樹はその持て余した感情を表すかの様に拳にギュッと力を込めた。


--俺の中にある微かな記憶--

子供の頃、兄とは仲が良かったのだろう。
僅かに、俺に優しく微笑みかける兄の顔がある。

 俺は昔、そんな優しく笑う兄が大好きだった様に思う。

その兄の顔が近き、口を塞がれた。

「……にぃさ…ん?」

中学だったが、俺は奥手な部類に入っていたのだと思う。

再び悠樹に唇を塞がれると、ぬるりとした暖かい感触が叡樹の咥内を犯す。

 叡樹が突然の事に訳が分からないでいると、男としては華奢な叡樹の肉体を悠樹のしなやかな指先が這いまわる。

 兄の指があちこち触る度、全身がピクピクと痙攣を起こし、更に俺の不安を煽った。

「感じてるのか?叡樹…」
「んっ…はっ…ンんっ…感じ…る?…あっ」
「分からないか…」

耳元で低く掠れた声の兄は、くすりと鼻先で笑うと、耳や首筋、胸元に唇を落としていった。

胸元に吸い付かれた瞬間、どこか不思議な感覚に見舞われ、頭も躯も痺れ、身体の中心に熱が集まる。

「…にぃさっ…んんっ…あっ…あっ…おかし…な…ちゃう…っん」
「しっ。静かにしろよ、叡樹」
「はっ…はぃ…っん…うっ」

次の瞬間には、俺のモノを口に含み、唇で扱き舌が器用に口の中で蠢き、今までに味わった事の無い感覚が俺を襲った。

「あっ…やっ…ぁ…にぃ…んっ…ふぅっ…ンんっ」

「いい顔だな、叡樹…」

手で押さえてもとめどなく声が漏れ、訳の分からない涙が溢れ、身体中が熱い。

整った顔が高揚し俺のモノを貪りつき、歪んだ顔が何処か妖艶で視覚すら刺激して、熱を帯びる躰に拍車をかける。

ゴソりと兄の手が腰から後ろの割れ目を伝い滑る。
床に俺を転がすと、その腕でガッチリと腰を抱え込み、俺の脚を開き持たされる。

「しっかり持ってろ。言う事聞けないと酷い目に合うからな」
「わ、分かった。にぃさん」
 
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