‡A la carte‡
□行方不明の恋心
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言われたまま、素直に従った。
ヌルリとした感触が下半身を襲う。
「やっ!…な…っに?…んんっ…にぃさっ!?」
「じっとしてろよ」
「やっ!あぁっ!はぁ……あっ…っ!」
熱を帯びた息が漏れ出て声が止まらない。
悠樹の舌がまだ未熟な叡樹の中へと押し入る。
全身が震えて、脚を持てと言われたがソレすらままならない。
「にぃっさっ…もっ…もて…なっ…」
「ああ、もう良いよ」
兄の顔が近づくと違うモノが俺の中で蠢いていて、ソレは長くしなやかで俺の中で暴れていた。
「い、いやぁっ…ソレ…やっ…あっ…あっ」
「……指、増やすよ…」
「いっ!痛っ!!…やっ…あっ…っ!」
増やされた指は確実に穴を広げ痛みを伴ったが、休むことなく俺の中を弄る。
快感と痛みがごちゃまぜな感覚が俺を支配した。
「あぁっ!ヤっ!…にぃさっ…っ…っ!!」
「お前ホント良い顔」
甘い声をあげながらも、初めて悠樹に抵抗をみせたが、叡樹の僅かな力では年上で鍛えあげられた悠樹には敵うはずも無かった。
「…入れるぞ……叡樹」
入れる?なにを?
熱いモノが蕾に押し付けられると、激痛が押し寄せた。
「いっ!痛いっ!!…やぁっ!!ヤメっ!〜〜〜〜っ!!」
泣いても叫んでも、兄は容赦無く俺の中に押し入る。
ユックリと…
まるで自分の形を俺に確認させる様にユックリと入れるその顔は、勝ち誇っていて、獲物を捕らえた様に薄く気味悪いほど口許を歪ませ笑っていた。
俺は痛みでガクガクと震え、抵抗処か動けないでいた。
「叡樹…俺のモノだ…」
「え?」
兄がボソりと囁いた瞬間、部屋のドアが開かれ、父が現れた。
「何を…何をしている!お前達!!」
怒鳴ると同時に俺達を引き離し、兄の腕を掴むと俺に冷ややかな視線を向けた。
「叡樹、服を着なさい」
血まみれになった床などお構い無しに、父はその一言だけ吐くと、兄を連れ部屋を後にした。
その後、兄と父の口論を偶然聞いてしまい、俺だけが養子で皆とは血の繋がりが全く無いと言うことを知った。
俺は父の遥か昔の女性の子供らしく、赤ん坊の頃に両親を亡くし、施設にいた所を貰ってくれたらしい。
あの一件以降、兄と俺には監視がつき、話す事もほぼ無く、あの時の言葉の真意を聞けないまま時は過ぎた。
──後に、本来あの行為は男女の想いを満たす行いで求め合うからだと知った。
────兄は俺が養子なのを知っていた。
−−知っていたからあんな行為に及んだのだ…己の性のはけ口として――
――――――――
「…ホント…最低…」
誰に言った訳でもない言葉と一緒に涙が溢れて止まらない。
過ぎた事を思い出し、何故涙するのかすら分からない。
俺はあの家の邪魔者で小間使いで…あの人達の足元にも及ばない人間だとあの時、思い知らされたからか…
同じ歳くらいなのに、あの頃の自分と今の正樹があまりにも違いすぎているからだろうか…
「…ホント…悪かったって」
「違うから…お前のせいじゃ、ない…っから…」
一度崩れてしまった堤防は、そう簡単に修復する事は出来ず…
――…小さな子供みたいに、泣いてしまった……しかも、弟の前で――
「はい。落ち着いた?」
「あ…ありがとう…」
バツが悪い…
年下の弟に気持ちが落ち着くまで傍に居て貰った挙げ句、気を使わせて飲み物まで買って来て貰うなんて…
「あの…さ」
「ん?」
「突然なんだけど……さ」
何やら正樹の様子がオカシイ。
ソワソワと落ち着かず、目も游いでる。
「なに?」
「その…勉強…教えて…欲しい…」
「は?」
ソレはあまりにも突然で…
我が耳を疑った。
『勉強教えて欲しい』と聞こえた…気が、した。
「おおお教えてくれんのか、どうなんだよ!」
耳まで真っ赤にして、照れてる!
あの正樹が!!
「…ぷっ…くっ…くふっ…ふふっ」
「てめぇっ!!」
「ごっ、ごめっ…だって、お前…顔、真っ赤…っ!!」
正樹には悪いと思ったけど、真っ赤になって『お願い』する様も、タイミングも図れず、大泣きした人間にどう話しをすれば良いかもわからず困惑している顔も、あまりにも今までの行いからは掛け離れていて…
年相応すぎる正樹の態度に笑いが込み上げる。
悪い意味じゃなく
「…で、教えてくれんのかよ?」
「…ふふ、教えるよ。ちゃんと俺の事『お兄さん』って呼べたらね?」
「っ!てめぇ!」
ちょっとした意地悪。
勿論今までのコイツからは想像出来ない『勉強教えて』なのだから、大進歩に手放しで教える。
「教えて下さい…叡兄ちゃん…」
真っ赤になって、小さく小さく消えてしまいそうな声で呟いた正樹は可愛くて…
すっかり俺の鬱な気持ちを洗い流してくれた。
「了解。可愛い弟くん」