ノーマル
□始まりの音
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ごーん、ごーん、……
「なってますね、除夜の鐘」
帝人の言葉に臨也は顔を上げる。
「もう、2010年が終わるのか……」
何処と無く物寂しい音を聞きながら、二人は寄りそう。
「一年間、色々あったね」
伏せられた睫毛は柔らかに。
「……臨也さん?」
「何だい?」
赤褐色の瞳が開く。
「あ……いぇ」
泣いているのかと、思った……
「ねぇ、君は……ずっと傍に、いてくれる?」
珍しく弱気な発言。
帝人は目を見開いた。
「当然じゃないですか」
「……」
「臨也さん?」
「俺はね、そう言って、結局離れていく人間ばっかり見てきた。」
臨也さん……
「ねぇ」
語気が強まる。
「本当に、ずっとここにいる?」
あぁ、この人は……。
あんなに気味悪い程に人間愛を叫んでいるけれど、本当は愛してるんじゃない。愛していたいんだ。信じる事が怖いから、人から信じられないように振る舞っているんだ……。
「帝人くんっ」
「……」
今は、何を言っても、伝わらないような気がした。
だから僕は、ただ黙って臨也さんを抱き締めた。
「帝人くん……」
背中に回された腕に、力がこもったのを感じた。
「います。何があっても、ずっと、傍に」
最後の鐘が、新しい1年の始まりを告げた。
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メールの品。折角なので年内滑り込み。