臨也総受け
□さんた。
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「……おい、幽それ何だ?」
久し振りに見る弟は、何やら赤い物を持っていた。
「没になった衣装なんだけど……」
そういって広げた赤い物は、サンタクロースの衣装を模したワンピースだった。
「兄さん?」
「……それ、もう使わないのか?」
静雄は、子供が新しい玩具を見つけたときのような目をしている。
「うん。……使いたいの」
幽はきょとんとやけに上機嫌な兄を見た。
「……? 臨也?」
「っ、な、何でもない」
急に黙った臨也に疑問を投げ掛けると、臨也はぶんぶんと首を振った。静雄が不審に思い臨也の見ていた方を見ると……
……サンタのワンピース?
「……着たいのか?」
にやり。
「ち、違うよ! そんなわけないだろ!」
「へーえ?」
顔を真っ赤にする臨也に静雄は段々楽しくなってきた。
「買ってやろうか」
「い、いらないよっ!!」
そのままワンピースに近付こうとする静雄を臨也は慌てて引っ張りその場から離れた。
「ふふ、まあな」
静雄は込み上げてくる笑いを押さえながら、幽からワンピースを受け取った。
「……?」
「着せたいヤツがいるんだよ」
ワンピースを丁寧に畳む。
「腹減ったし、飯にすっか」
「うん」
ピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーン……
静雄は夜も遅いというのに遠慮なくインターホンを鳴らしまくる。
「んー……シズちゃん!?」
ドアを少しだけ開けてひょこっと顔を出す臨也はムカつくが可愛い。
「よぉ臨也、プレゼントだ」
「え?」
静雄は袋を持ったまま、まるでここは自分の家だというようにずかずかと上がり込む。
「ちょっと、シズちゃん!?」
臨也は静雄に引きずられるようにして寝室に連れられた。
「なにを……っ」
問答無用で服を剥ぐ静雄。
「ほらよ」
臨也にサンタワンピースを放り投げる。
「え、それ」
幽に感謝だな。こいつもこんな顔出来るんじゃないか。
「着ろよ」
臨也は真っ赤な顔で静雄を見る。
「ま、まだクリスマスには遠いよね」
「知らねぇな、そんな事」
焦れた静雄は頭からワンピースをから被せた。
途中、くぐもった抗議が聞こえたような気がしないでもないが、静雄は強引に着せた。
……案外、着せ替え人形とかは楽しいモノなんだな。静雄は少しだけ小さな女の子の気持が分かった気がした。
「……可愛いじゃねぇか」
別にからかった訳じゃない。心からそう思った。
臨也は更に顔を赤くしてそっぽを向く。
「……バカ」
臨也は小さい声で言ったが完璧な照れ隠しだ。普段はとことん鬱陶しい野郎だが、こういうところは本当に素直で可愛い。
「臨也」
「なに……」
静雄はそれこそ人形のような臨也を抱き締めて、後ろからそっと囁いた。
「クリスマスは、二人きりで過ごそうな」
「……うん」
甘い沈黙が、二人を包み込むように広がった。
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何故か幽君がでしゃばる今日この頃。
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