臨也総受け

□おせち。
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 乾燥させた小魚を乾煎りする。冷めたら醤油、みりん、砂糖、赤唐辛子を少量、これを煮詰めた液で絡める。しかし絡め過ぎると全部くっついて取れなくなる。

 正月のおせち料理、特に関東風の祝い肴三種として欠かせないが、今回は古今東西関係なく詰めてみる予定だ。


「大分埋まったな」


 臨也は豪華な5段の重箱を眺める。田作り、黒豆、叩き生姜、数の子、かまぼこ、伊達巻、昆布巻き、栗金団、お多福豆、蕪、海老、……


「五段重は、一の重に祝肴、二の重に酢の物、口取り、三の重に焼き物、与の重に煮物、五の重は控えとして何も詰めない。これは現在が満杯(最高)の状態ではなく将来さらに繁栄し、富が増える余地があることを示す縁起物である。

 ……だからシズちゃん、不思議そうに見ないでくれるかなぁ? 君が五段重なんて見ないのもわかるけどさぁ。

 一番上は空でいいんだよ」


「そうなのか?」


 いつものバーテン服にカフェエプロンで、そんな間抜けな顔はしないで欲しい。

 なんか台無しだ。


「あ、食べる? 余ったやつ」


 シズちゃんの為に甘くした栗金団を指す。まさかシズちゃんの為に余るように作ったとは言わない。


「いいのか?」


 案の定、静雄は目を輝かせた。が。


「いや、やっぱいい。正月の楽しみにとっとく」


 あれ。食べないのか……残念だなぁ。まぁ波江の手土産にでも持たせるからいいけどさ。


「折角臨也が正月の為に作ったヤツだからな。正月に食べる」


 ! 不意打ちを食らった臨也は頬を桜色に染めた。


「ん? 何だ?」


 静雄は固まった臨也を覗き込む。


「いや、何でもない」


「そっか? まぁその前に、年越し蕎麦だけどな」


 俯いた臨也に、静雄は無邪気に笑った。






「あぁ、初日の出、見に行くか?」



 
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 因みに私はおせち料理を作った事はありません。

 母が作るのをありがたく頂きます。

 

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