☆敏感彼氏と鈍感彼女☆

□#1
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「またヤらせてな?」


ブチッ

「二度とヤるかーっっ!」

「そない、怒らんと。ここ、ホテル前やしな?」

知っとるよ。
ホテル前やってことくらい。

常識人のこの私がこんなに朝っぱらから
怒りを散らしている理由。

それは―――・・・

「ホンマに、二度とヤらんからね!」

「あー、分かってるて。またな?」

「「またな?」ちゃうわ!二度と会わんちゅーことや!!」

そのまま彼は「またな」とまた、一言つけて
朝のホテル街から消えていく。

「ホンマに、あの男とは一生ヤらん!!」

怒りを散らしている理由―――・・・

「2回イかせたら、5万。」

という約束を軽く破り、結果。

「5回イかせられ、5万。」

ありえへん!!!

彼は「1回1万、ちょうどえぇやろ?」という
わけの分からない理屈をこね、きっかり5万しか払わなかった。


何がちょうどやねん・・・・!!


「あ、学校・・・」


一応、こんな行為をやっていても年齢上は
学生として扱われる。

四天宝寺高等部1年。
麻生千亜。

アバウトかもしれないけど、これが私。


まぁ、もっと深く言うなら
「尻軽女」ってことも含まれる程度やろか?

そうなったことにもわけがあるわけで・・・

って!学校やった・・・!

学校にいるときの姿の、
メガネをかけ、セーターを羽織る。

そして、ホテル前から颯爽と消えていく







はずだった。


「麻生、さん・・・・?」


最悪や。


ホテル前。
本性剥き出しの暴言を吐いた。
メガネを掛けて学校にいる姿。


「白石、・・・くん・・・?」

なんで、こんなとこに居るん?
私の姿をどこから見ていた?


いろいろとアカンでしょ・・・。


「な、なにしてるん?こんなとこで?」

だぁあああ!!
墓穴ほったやんか!

「こんなところでなにしてるん?」
なんて、そないなセリフ完璧に私に向けられるべき
セリフやんかっ!!


「いや、そっちこそなにしてるん?」


せやんな!
そうくるのが普通やんな!!


「えー・・・っと、」

言い忘れたけど、四天宝寺は中高一貫校。
せやからそのまんまあがってくる人がほとんど。

せやから、知らん人はほとんどおらん。

よって、白石くんも中学3年のときに
クラスが一緒になったため、顔見知りくらいにはなっている。


まぁ、そこまでしゃべらんかったけど。

アイドル的存在の彼と話すやなんて
こんな凡人に許されるわけがない。

せやけど。
こんな凡人だからこそ、私の場合は
クラスで上位の成績をとっている。

ちゅーことは、必然的に優等生として扱われる。


以上から「実は尻軽女でした」なんていうことは
許されない。

今まで猫被っただけやけど、
こんなんでも、勉強したし努力もした。

そんなことを3年間もやってきたのを
この瞬間で壊されたくはない。

せやけど・・・
言い訳できる状況では全くない。


「すまん、全部聞いてしもうて聞く必要ないっちゅーか・・・」


白石くんが突然誤りだしたと思ったら
全てを聞いていたという事実を明かされる。


あー・・・終わった。

私の3年間とこれからがブチ壊しや。



「あー・・・見苦しかったやろ?ごめん。」

こんな女やねん。そう私は付け足した。

どうにでもなれ。
すでにあきらめ状態。


「このこと、学校で誰か知ってるやつ居るん?」

「居らんよ、白石くんだけや。」


そう、お前だけ。

さよなら、今までの私。
こんにちは、本来の私。

「このこと、黙っといたほうが・・・えぇやんな?」

それ、問う!?
今の現状を見てそれを私が答える資格あらへんやんか。
答えてホンマに守るなんて思えへん。

この時点で希望なんか、当に失うてるんや。


「ま、まぁ。」

「せやったら、黙っとく。」

あー、そりゃどうも。

(男なんか信じない。)

別に、白石くんがなんかしたとかちゃうけど
これは私の中で一生変わらない。
さっきだって約束破られたからね。

「さいですか。」

そっけない返事しかできない。
ごめんなさい、白石くん。

せっかく黙っとくって言うてくれたんに。

「せやから、お願い聞いてもろてえぇ?」

「お願い?」

そっち目当てか、白石蔵ノ介。
金?
まぁ、さっき貰ってるのみられてるから
それもおかしくないな・・・。

それやったら絶対に渡さん。
これは私が稼いだ金なんやから。

さぁ、要求はなんや!

「俺と付き合うてくれへんかな?」


え・・・?

付き合う?


「それだけ?」

「ハハ、あっさりやんな。言うの、結構緊張したんやけどなぁ。」

笑いも少し入りながら安心した表情を見せる白石くん。

「お金やないの?」

ハッ!
しまった!
内心バレバレやんか!!


「お金なんかいらんわ。付き合うてもらうだけで十分やねん。」

「あ、・・・そう。」

不思議な人。
それが、白石蔵ノ介の第一印象。


*白石side*

「とりあえず、学校いこか?」

「あぁ!学校ー・・・」

「なん、忘れもん?」

「学校を忘れてました。」

「なんでやねん、」

と笑って突っ込んだ。

あ、そういえば。と思い出したように
麻生さんは口を開く。

「どこまで付き合えばえぇの?」

なんや、期間制なんや。
俺的には一生なんやけどな。

まぁ、やっと仮かも知れへんけど
彼女になってもらえたんやから、簡単に離すわけはない。

「帰りは部活なんやけど、待ってー・・・あ、やっぱえぇわ。
とにかく、朝は一緒に付き合うてほしい。」

「分かりました、部活が終わるまで待ってればえぇんやね?」

全く伝わってへんやんか・・・!!

「せやから、部活があるから先に」

「待っててほしいんやないん?」

俺が訂正しようとした発言に割って入る麻生さん。

「遅なるで?」

「えぇよ。お願いやんか、付き合うって。」

「おおきに。めっちゃうれしい。」

「そう・・・」

そして話が途切れると静かになる、麻生さん。
俺の知っとる麻生さんや。

せやけど、それはホントの麻生さんやなかった。
多分、あの男に対する態度や発言が本心や。

俺にも、その態度で付き合って欲しいと思う。

まぁ、いきなりその本心で向かってこられても
困るんやけどな。

せやけど。




(「お願いやんか、付き合うって。」)










―――嬉しかったんは、その一言。
 

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