☆敏感彼氏と鈍感彼女☆

□#6
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「千亜、休みやってー」
「ホンマに!?」

メールがきとるで、と秋穂に携帯を見せる紗江利。

____________

生理痛が再来しよったから
今日休むわ。

秋穂ちゃんにも言うといて。

あと、悪いんやけど
明日ノートみせてほしい。

ごめんやで><;

   ―END―
____________


「ノート、今日はしっかり書くでー!!」
「いつも書いてないんかい」

「今日、麻生さん休みなん?」

そんな会話をしていた二人に俺は割って入った。

「あれ?メール来てないん?」

「あー・・・うん」

メアドはまだとしても連絡先すら
知らん俺ら。

彼女を全く知らん俺。

「そうなんや・・・?千亜は休みやで、これ。」

そういって携帯の麻生さんから来たメールを
見せてくれた。


「ほら、千亜は人に気をつかいすぎるから
白石くんにメールせんかったんや」

「あー・・・分かるわそれ。
もうちょい人を頼ったほうがえぇねんな、彼氏なんやし。」

”彼氏”麻生さんはまだ言ってないんや。
勘違いやったちゅーことを。

言ったほうがえぇんやろか?

そんなことを悩んでいたら、
興味深い話が聞こえてきた。


「いつからやったっけ?あー・・・中学のあれからやろ?」

「あの夏休み明けやろ?」

「それそれ!やっぱ、気づいとったんか、紗江利。」

「当たり前やん。夏休みなんかあったやろ?」

せやんなー、と話しているが
俺には全くわからない話やった。

せやけど、重要な話やって直感した。


「なに、夏休み明けて?」

俺がそう問うと、二人は顔をあわせて
困ったような顔をみせた。


聞いたらアカン話なんやろか?


やっぱえぇ、と断ろうとしたとき、
「まぁ、彼氏やしな。」

と切り出し、話し始めた。


「千亜のオトンはホンマのオトンやないねん。」


大雑把やったけど、結論は
実の母親が再婚したっちゅーこと。
それから親と亀裂が入ってしもうたらしい。


・・・ちゃうな。

それだけやない。

それだけって言い方はあれやけど、
親との亀裂ができてホテルに行き来するて
おかしいやろ。


他にもなにかあったんや。


「・・・白石くん?」

「え、?あぁ、教えてくれておおきにな。
あと、」

しょうがあらへん。
直接、聞くしかないみたいやな。
簡単に話してくれるなんて思ってへん。

わかってる。

ただ、会いたいんや。


「麻生さんの家、教えてくれへん?」


そういうと、知らんの?!という言葉が返されたが
簡単に地図を書いて渡してくれた。









放課後―――


「白石ー、今日オフやしたこやき食べに行かへん?」

「すまん、今日は麻生さん家に行くんや。また今度な」

えぇ?!という反応とともに
金太郎どないすればえぇねん・・・!!
という返され方をされたがあえてスルー。

今日の用事は何があっても外されへんのや。




校門を出てさっそく地図を広げ
目的地に向かう。



「あ、ここや。」
確かに「麻生」と書かれている。

間違いないみたいやな。

せやけど、もし今インターフォンを鳴らして
家族の人が出てきたらどないすればえぇんやろか。

彼氏いうたら嘘になるし、
友達というたら、男やんってなるし。

あぁー!!
来たんはえぇけど先が分からへん!

一年前の聖書が泣くわ。


「あのー・・・何か用ですか?」


ふと後ろでソプラノの声。

振り向くと、

「麻生さん・・・?」

「あ、はい。麻生ですけど・・・」

「えと、千亜さんに用が」

そういいきる前にさっき穏やかやった声が一変して
俺に体当たりしてくるような勢いで

「千亜姉が帰ってんの!?」

そう言い残して、家にすぐ入り
バタバタという音が外まで聞こえる。

その前に、気になった言葉。

「”帰ってんの?!”って・・・」

帰ってへん・・・ちゅーこと?
それと、「千亜姉」つまり、麻生さんの妹・・・。





―――思ったより、複雑そうやな。





数分後、麻生さんJrが戻ってきた。

そして、第一声。
「で、なんで千亜姉を知ってるんですか?」

今はアルトのようなめっちゃ低い声。
さっきのソプラノは裏声かい。


「えっと―――」

友達、と言おうとした瞬間ある言葉が
頭の中で再生された。


(まぁ、彼氏やしな。)


「・・・彼氏、やから。」

都合がええと思った。
さっき、教えてもらったように教えてくれる可能性が
高くなる気がした。


麻生さんJrは目を見開いて俺を見た。

「ホンマですか?」

今日一番低い声を出しよった。
さすが、姉妹やな。
表と裏を使い分ける。

怖いわ。

「ホンマや。」

すまんな、これでもポーカーフェイスは得意やねん。

「・・・・」

急に押し黙る麻生さんJr。


「千亜姉、笑うてる?」

その言葉にはさすがの俺もすぐに対応できひんかった。


笑う?
俺の前では、はにかんだくらい。
笑うなんてあったか・・・?

友達といても確かに大笑いをしているところを
見たことはない。

会って、好きになってから2年も経つんに。


「その質問するっちゅーことは、
何かあったからやんな?」


コクンとうなずいてみせる。
・・・麻生さんと、そっくりや。


「教えてくれへん?そしたら姉貴の状況も教えたるわ」

一種の交換条件や。
教えてくれるか分からへん。
せやけど、こうでもせんと教えてくれへんやろ。


「・・・・ホンマに教えてくれる?」

「おん、約束は守るで。千亜との約束も守ってる。」


”欲をいうと会わせてほしい・・・”

その麻生さんJr.の言葉で長いこと会っていない
ということを悟った。

「お安い御用や、会わせたる。」

そういうと、パッとこちらに顔をむけて
「話します。せやから、約束守ってください。」
と言った。



一番初めに聞いた、ソプラノの綺麗な声を響かせて。
 

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