☆敏感彼氏と鈍感彼女☆

□#8
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「3人とも、今日からお父さんとこれから兄弟になる
蓮くんよ」

再婚した人の隣に隠れてる子。

興味は、無かった。


お母さんは一番出来の悪い私のことが
キライだった。

姉の真浅(まあさ)は頭がよくて運動もできる
”出来の良い子”だった。

妹の渚(なぎさ)もそれなりに頭がよくて運動は姉よりできる
”出来の良い子”に分類された。

真ん中の私は勉強は中の下で運動は人並み、つまり姉妹の中で
”出来の悪い子”に分類される。

当然、姉や妹のことはすごく可愛がった。

私はというと、中学の時から成績が思うようにいかず、
お母さんに冷たい目で見られ始めた。

せやけど、それを埋めるように
お姉はめっちゃ優しくしてくれ、
妹も勉強教えて、と頼ってくれる。


それが、私にとっては唯一の救いやった。


そんな日々を過ごしていたときに
再婚、そして新しい兄弟。

自分の生活をかき乱されたような違和感。

それもそのはず。

私の部屋に彼を置いたのだから。


「じゃあ、蓮くんは悪いけどれいなって子と
同じ部屋でいいかしら?」

「はい、大丈夫です。」

「ごめんなさいね。」

猫かぶり。むかつく。
私の了承なんて得やしない。

分かってたこと、やけど。




「部屋、よろしく。えと・・・千亜さん」

「プハッ!さんって・・・」

思わず笑ってしまった。
さん付けってゆう前代未聞な発言に。

「じゃ、じゃあなんて呼べばいいんだよ!?」

「えー・・・千亜とか?苗字じゃダメだし」

「じゃあ千亜、俺のことはテキトーに呼んでくれていいから」

「はいよー」



呼ばない。


そう、思った私の選択は正しかった―――



明日から夏休み。
季節はそんなとこ。


部活もやっていない私には休みたい放題なひと時やった。


せやけど、自分の部屋で出来るものも
この男がいるおかげで限られている。


音楽さえ、迷惑を掛けないようにヘッドフォン。

窮屈。


それしかない。

一週間くらいそんな日々が続いた。

同じ部屋にいるのにやることは
全く違うし、話もしない。


「千亜?」

扉が開き、お姉が顔を出してきた。

「んー?」

絶対に窮屈な顔を見せちゃアカン。
心配なんか絶対にさせへん。


「ちょお、おいで」

そういわれ、お姉の部屋へ行った。

「あれ、なぎも?」
見ると、私よりも先にお姉の部屋いた。

「いや、うちが呼んでん」

深刻そうな顔しとる。
3人、丸くなって座る。

「あの蓮って子になんかされた?」

「ハ?・・・いやなんも。てか、しゃべってもないで。」

「そっか。」

ふぅ、と安心した様子を見せるなぎ。

「蓮って男、危ないで」

今度はお姉がいう。
一体どれだけ疑われているんだ、あの男。

「何でそう思うん?」

「・・・勘や」

ハズレやろ、その勘。

「心配ありがとう、私は平気やから!」

それだけか、と思いすぐに自室に戻ろうと
座っていたところから部屋の扉の方へ向かう。

「変なことあったら叫びや!」

「叫ぶて・・・」

「千亜姉のことは守ったるから!」

「味方やからな、忘れんように!」

「おおきに」

それだけ返して部屋へ帰る。



♪♪〜

自室に帰るとさっきまで聞いていた曲が流れていた。

あれ、私流しっぱなし!?

確認するが、私のはきちんと切れていた。


「あ、すまん。居らんかったからそのまま聞いててん」

「その曲、好きなの?」

「おう!めっちゃえぇねんで?
この透き通る声がめっちゃ好きやねん。」

「わ、私も!」

「ホンマに!?同士やんか!」


この日を機会に仲良くなった私たち。

それから、ヘッドフォンは使わなくなった。

「今日はこの曲でえぇ?」

「おん、えぇよ」


こんな会話が楽しくてしょうがなかった。


そして、学校が前日に控えた夏休み最後の日。
お母さんとお義父さんは泊まりがけで
遠くへ行った。

お姉は泊りがけで彼氏のところへ。

妹は友達と遊びに行くという。

暑さが苦手な私はそのまま家に残った。

「ねぇ、遊びにいかへんの?」

「暑いの苦手やねん。せやからここで涼んでる。」

一緒や・・・。

まぁ、以前よりは窮屈やなくなった。
話は合うから気軽に話せるようにはなった。


「一緒やね。私も暑いの苦手やねん」


「なぁ、千亜は好きなやつ居るん?」

「えぇ?どんな質問してんねん。」

「真面目に答えてや」

「・・・居らへんよ。」

「ホンマに?」

じわじわと近づいてくる彼。


そこからは思い出したくない。


気づいたら、押し倒されて・・・


「・・・んぁ、・・・やめッ・・・」

ヤられてた―――

「ずっと好きやった、愛してる」

そう呟いた彼に鳥肌がたったのを
今でも覚えてる。

今では、悪化して吐き気もする。


「・・んふ、やめ・・・んぁあ・・・」


「やめへんよ、やっと好きな人と繋がったんやもん」

そういって奥をつく。

「ふ、俺で感じてるん?」

「、ん・・っ・・・ふぁ・・・感じて、・・んぁ、ない・・・」


「嘘、言うんやないで?」


「嘘、じゃ・・・んぁ、ン・・っ・・・」

「こんなに感じてるんに嘘なわけないやろ、」


自分でも分かってる。
体がバカみたいに反応する。



「もう・・・っぁ、やだ・・・ンぁ・・」

「じゃあ、名前呼んで?」


「なま、・・んっ・、え?」


「呼んだことないやろ、寂しかったんやで?」


「・・・っや、呼びたくない・・っ」

そう言ってさっきより強く、
シーツをつかむ。

絶対、イきたくない・・・・!!

そう思えば思うほど涙が目にたまる。

「頑固やなぁ・・・、ふッ・・・」


「・・んああぁっ・・・っ・・・」


覚悟もむなしく私はイった。

もう、涙なんか出てるんかも分からん。
頭が真っ白で、放心状態。


「ただいまー!お姉?」

ガチャっと開けた瞬間―――

グチョグチョの二人の体。
やっていたのは一目で分かるはず。

勘違いされる?
冷たく見られる?

もぅ、どうだってえぇ。



「アンタ、お姉に何してくれてんねん!!!」

フっと嘲笑うかと思ったが
現実は真逆だった。

なぎは、私を馬乗りにしていた男を
蹴飛ばした。

「・・・な、ぎ・・・助けて・・・」


「当たり前やんか・・・・!!」

その言葉に酷く安心を持った。


その後の記憶は無い。


なぎに聞くところによると、
お風呂に入れて、なぎの部屋で寝たらしい。


確かに、起きたのはなぎの部屋やった。




「学校・・・」

「お姉・・・ホンマ、ごめん!!」


「・・・ぇ?」

「助けてあげれんくて・・・」

勢いよく謝ってきたと思ったら
涙が頬を伝った。


「十分やったよ?おおきに、なぎ。」

ホンマに。
一生分の”助け”やったよ。

十分や。
ホンマに一生分の”助け”。
せやから、私は・・・・





―――もう、誰にも助けられたりせぇへん。






頼ったりなんかしたら、迷惑や。


「お姉ぇえええー・・・」

抱きついてくるなぎを受け止めて頭をなでた。


その日、学校に行った。
いつものように。そう、いつものように。


「おはよーさん!」

「おはよー、久しぶりやなー!」


そんな会話が飛び交った。



放課後。
あの家に帰るなんてもう限界や。


手にとったんは、携帯電話。


相手は―――


「どないしてん」

母親。


「一人で、一人で暮らしたい」


「ホンマに!?」

輝いたような目が目に見える。
明るい声。
心配なんて一つもせんような声。


「えぇ?」

「えぇよ!手続きしてや?あと、家賃とか学費とかは
全部払ったるけど、お小遣いは自分で稼ぎや。
もうすぐ高校生やろ?」


「わかった。今日、手続きするから
もう戻らんから」

「わかったわーほな」


ツーツー・・・

目の前で言わんでよかった。
むかつくのが増すだけやったわ。


ほな、最後の家に向かうか・・・。



家に行き、自室に行くと彼はいなかった。


よかった。


すぐに荷物をもって家を早々と出る。


「さよなら」


そう、一言残して―――
 

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