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□お前がいるから
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あぁ、怖い。
血を見ると、あいつが、ジルが生きている気がして。

あぁ、怖い。
あいつが俺のことを恨んでいる気がして。

あぁ、怖い。
・・・全部切り刻んでしまったら怖くないかもしれない。
記憶も、人も、何もかも切り刻んでしまえ。



「……パィッ!」



…何だ。今の。声?誰の?

こ、わい。怖い。
分からないのが怖い。
…何が怖いんだ?

……俺は自分が怖いんだ。
分からないのが怖い。
俺は何をした? 記憶が無くなる。
分からない。何をしたんだ。こ、わい…
怖い怖い怖い怖い怖い怖いこわ…


…頭。温かい。
何で?
あぁ、分かった。
これは人の体温。
人の手が、置かれてる。
誰の?




「ベルセンパーイ。ミーがいますよー。
安心してくださーい。怖くないですよー。」


…ふ、らん?


「そーですー。ミーは怖いですかー?」


…怖くない。


「そうですかー。良かったですー。」


フラン。俺を、助けて。早く。俺を…


「助けてあげますよー。
センパイは何が怖いんですかー?」


俺が。自分が怖い。


「ミーはセンパイが好きですー。キレてる姿も含めて、センパイの全てが好きですー。」


……っ


「ちょ、泣かないでくださいよー。
ミーは笑ってるセンパイの方が好きなんですよー?」


…怖くねーの?


「(スルー…!?)ぜんぜんですー。むしろ大好きなんですってば。」


本当かよ…


「はい。誓いますよー。」


…ふーん。


「…もう大丈夫ですかー?」


ん、大丈夫。


「てか細すぎませんかー?」


…は?


「いや、止血するために腹の傷見たらー細かったんで。
もー、菓子ばっか食べてるからですよー?」


うっせ!王子に文句つけんなっ!!


「ゲロッ。…何だよー。助けてやったのに扱い酷すぎだろーこの堕王子ー。」


うっせー。まじうぜぇ。


「…まあ、これがセンパイらしさですよねー。
さ、帰りましょうかー。」


ん。……あ、りがとなフラン。


「どーいたしましてー」





(血を見てキレた俺の心は怯えてる)
(でもフランが宥めてくれるから)
(俺の心は壊れないでいられるのだろう)

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