GS3


□ツーピース
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教会で、とても綺麗な男の子に会った。

透き通るような金髪に、整った顔。
綺麗だった。
それ以外の言葉が見つからないくらい。

私の中に、あの二人の兄弟の姿が鮮明に思い出された。





今日は入学式。

小さい頃の夢を見て目覚めた私は、懐かしい気持ちのままベッドから降りた。

「行ってきます」

母にそう声をかけて玄関を開けると、
眩しい日差しに目がくらんだ。
「まぶし…」

今日から新しい高校生活が始まる。
別に期待や楽しみは感じていない。
普通の高校生活を送れたらいい。
それだけだ。

太陽に目を細めながら門から道路へ出ると、思い切り何かに額が当たった。

「う…っ」

額を押さえながら見上げると、
鋭い目と視線が合った。


「危ねえな、おい」

「………」

……何だよこの強面…。

ふと横を見ると、そこには昨日教会で会った男の子が立っていた。

「あ、昨日の…」
「二人揃ったら、思い出すかと思ったんだけど。ダメ?」

その男の子の言葉に、二人の顔を見た後、ハッと気付く。

「二人って…もしかして、琉夏と…琥一?」

「ああ」
「当り」

私が目を見開いて立っていると、琉夏がフッと笑った。

「名前ちゃん、おかえり」


「二人とも…小さい頃と変わったね」

三人ではば学までの道を歩く。
海沿いにさしかかった頃に、私が聞くと琉夏が振り向いて笑った。

「あれからコウはグレたから」
「“二人とも”っつってんだろ。
つうか、お前こそ…。少し雰囲気変わったよな」

琥一の言葉に、名前は少し焦る。

「そ、そうかな。別に私は何も変わってないよ」
「そうだよコウ。俺、名前ちゃんだってすぐわかった。髪が伸びてもっと綺麗になってるし」
「そうじゃなくてよ。
まあ、見かけも多少変わったけど、雰囲気のほうがな…」

琥一の言葉に、名前は慌てて言った。

「ほ…ほら、二人共、入学早々遅れるから!急ごう!」
「わ、本当だ。Bダッシュ!」
「走るぞ」


走りながら、名前は内心ハラハラしていた。

二人を見た時、同じ匂いがしたんだ。
すぐにわかった。
二人も、私と同じような中学生活を送っていたんだろうと。


はば学では、昔の私がバレたくない。

小さい頃の思い出の町で、
小さい頃のままの私でいたいから。

バイクも捨てた。
煙草も捨てた。
あの頃の友人達も捨てた。
喧嘩も…やめた。
全てが嫌になって、捨てた。

捨てて正解だった。

大きくなった琉夏と琥一と会って、強く感じてしまった。
初めて二人と会った小さい頃の私に戻りたいと。


だから、バレたくない。

普通の高校生活を、送りたい。






桜が舞い散るはばたき学園に着いた。

まだ校門へ新入生達が続々と入っている時間だ。
三人で安堵のため息を吐く。

「間に合ったか」
「余裕♪」
「ギリギリじゃない、早く入ろう」

琉夏と琥一と門の中へ入ろうとすると、他の生徒達から視線が集まった。

「お、おい、あれ…桜井兄弟じゃねえ!?」
「桜井兄弟って、例の、あの!?マジかよ、聞いてねーよ!」
「なんではば学にいんの〜?やだあ、なんか怖い〜…!」

こちらを指さしながら、周りがざわつく。

…桜井兄弟って…二人のことか。
やっぱり、そうだったんだ。

同じ匂いがすることに、名前は確信を持った。

「桜井兄弟の間にいる子は?あいつらと知り合いなのか?」
「普通に美人じゃん!でも…あの兄弟と仲良いんじゃ…お、俺らは無理だよ」

琉夏が名前の耳に顔を寄せる。
「名前ちゃん、噂されてる」
「そ、それは二人でしょ」
「美人だって。やっぱりね、俺もマジでそう思うもん。
勿論、コウもね」
「…何言ってるのよ、早く入ろう」

噂話がこれ以上聞こえないように、名前は二人の腕を掴んで校舎へと歩いていった。
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