青エク

□君へ
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「はあ…」

 帰る道すがら、思わずため息が出てしまう。

 ここの所連日任務続きで、疲労しきった身体ではそれも仕方ない事だろうと雪男は結論付けた。




「ただいま」

「おう、おかえり!」

 重い足を引きずり、寮の扉を開ければ、すぐさま返ってくる元気な声。

 その声を聞くと、疲れていても、ついつい笑顔がこぼれてしまう。

 着替えるより先に燐に会いたくて、明かりの漏れる食堂へと向かえば、料理のおいしそうな香りが雪男を包んだ。

「あれ?着替えて来なかったのか?」

 料理の乗った皿をテーブルへ置いた燐は雪男に尋ねる。

 が、当の雪男は燐の姿を視界に捉えたと同時に、時間が止まったように固まってしまっていた。

 「雪男?」と燐が首を傾げて近寄れば、ようやく機能が復活したように雪男は眼鏡の位置を正す。

 そして、もう一度燐の姿を確認した後、至極尤もである疑問を口にした。

「…兄さん、何でそんな格好してるの」

 誰が聞いても分かるくらい棒読みで並べられた言葉に、燐はそれを気にした様子もなく答える。

「あ、これか?しえみがくれたんだ」

 そう言って一回転してみせたのは、どこからどう見ても女性用であろう、白いフリルが付いたピンクのフリフリエプロンだ。

「……」

 一瞬その姿に目眩を覚え、思わず「天使だ…」と呟きそうになるのを何とか呑み込む。

 何て事をしてくれたんだという気持ちと、またとない燐のフリフリエプロン姿を見られたという嬉しさが両方こみ上げてきたが、結局勝ったのは後者の方だった。

「…なあ、変か?」

 黙ったままの雪男に、燐は不安そうに聞く。

「あ、いやそんな事ないよ。ただ、どういう経緯でそうなったのかなって思ってただけ」

 そう返すと、途端に言いづらそうに視線を逸らす燐。

 そんな反応をされると、かえって気になってしまう。

「ねえ、どうして?」

 問いかければ、迷ったように数秒うなり声を上げた後、ようやく燐は口を開いた。

「お前、最近忙しかったから…、その、疲れただろうと思って…」

「うん」

「しえみに相談したら、こうすれば良いって言って、これ、くれたんだよ」

 恥ずかしさをこらえるためか、何故かしかめっ面になっている燐に、思わず吹き出してしまいそうになる。





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