おだい

□その笑顔は反則だから
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一週間後



「クシナ!波風君と付き合ってるって本当!?」

「本当だけど…」

「嘘!?頑固なクシナと優しい波風君とか絶対相性悪そうなのに!」

「…そうでもないよ。ミナトは自分の意見ちゃんと言ってくれるし、私の意思だって尊重してくれるし。それにミナトの考えって私と違うから新鮮で楽しいよ?」

「………あぁ、そう…」


あのクシナが、恋する乙女になってるなんて…

波風ミナトってどんだけすごいのよ。






「おい、ミナト。うずまきクシナの話題で持ち切りだぜ?」

俺が後ろの席に座っているミナトに話かけるといつものようににこにこ笑って答えた。

「そうなんだ。クシナは可愛いからね」

言いたいことが全く伝わっていないようだ。

「…強気少女が恋する乙女に早変わりって話だ。お前一週間前は初対面だったろ?一体どんな手使ったんだよ」

一週間お試しで付き合ってみて、その後正式に付き合いだしたらしい。

ミナトは優しくて賢い。顔も整ってるし、運動神経もいい。だから男女ともに人気がある。

そう記せばミナトもうずまきクシナと同じくらいモテそうなもんだが、ミナトの場合は女子は皆平等に接してきたため告白するやつはそう多くはない。

そういった理由からもミナト賢いと言える。

というか、ずる賢くて腹黒いというのが俺のミナトに対する印象だ。

勿論、頼れるいいやつだと知っているが、こと恋愛に関してはそう思っている。

だって、欲しいものを手に入れるためには色々やりそうじゃんこいつ!

そう思っていると、ミナトは顔色を変えた様子もなく答える。

「どんな手って、特に何もしてないよ?」

「はぁ?」


いやいや、何もせずに強気少女が恋する乙女に変えるとか無理だろ。

俺が疑いの目でミナトを見ていると、ミナトは次の授業で使う教科書をトントンと揃えながら呟いた。

「ただ…」

「ただ、なんだよ」

「クシナは可愛いって言うよりは美人さんでしょ?まぁ俺にとってはすごく可愛い人でもあるんだけど」

催促して出てきた言葉はのろけ意外のなにものでもない。

「………で?」

「毎朝会った時に可愛いねって言うと、慣れてないみたいで凄く可愛い反応してくれるんだよね」

続けてから分かったが、もし方法があったとしてものろけが9割入るに違いない。

そして人ののろけ話ほどつまらないものはない。

それでも気力であいずちを打つ。

「…………ほう」

「デートも基本的にはアクティブなんだけど、だからこそ可愛さ炸裂で、ついつい口に出ちゃうんだよね。俺正直だからさ」

「………………」

あいずちを打つのもめんどくさくなってきた頃だった。

「それに、クシナの行動パターンはすぐにわかるから特に振り回されてるとかは思わないかな。あ、クシナすぐ表情にでるから、彼女の一喜一憂に振り回されてるかもね」


何となく分かった。

強気少女が恋する乙女に変わった理由。

簡単に言ってしまえば、振り回す側だったうずまきクシナが振り回される方へ変わったというだけの話。

分かってしまえば、理由だの方法だの尋ねれば当然のろけが返ってくることも予想できる。

しかし、まぁ、恋するやつは互いに相手に振り回されてるようなもんだから、これはこれで相性が良かったってことなんだろう。


「………………幸せそうで何よりだ」


俺は次の授業を寝ることにした。







シカクさんをイメージ
AND 2011/9/7
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