記念日B
□クシナさんの楽しい誕生日
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午前中は二人でウィンドウショッピングをして過ごした。
店内はクーラーが効いていて涼しかったけど、私が試着をするたびに
「クシナはスタイルがいいからワンピースが映えるね」
とか
「クシナの赤い髪と色が合ってきれいだね」
とか言うので、クーラーはあまり役に立っていなったように思えた。
お昼は大通りに新しくできた洋食屋さんに入った。
ミナトが「せっかくだから」と食後にケーキを頼んだ。
私は色々なフルーツの乗ったショートケーキ。
ミナトはベリーのタルトを選んだ。
お互いに1口ずつ交換して食べた。
「あーん」には照れたけど、今日くらいは!と勇気を出して頑張った。
私はきっと真っ赤な顔をしていたはずなのに、ミナトは笑顔で口をあけた。
「おいしい」と言うミナトは照れるというよりは、嬉しそうだった。
支払いはミナトがするというので、お言葉に甘えて(じゃないと拗ねるから)邪魔にならないように店の外に出て待つことにした。
するとあろうことか、知らない男に声をかけられた。
「あれぇ?こんなところに可愛い子発見」
「ちょうどいいしさ、俺達とどっか行かない?」
2人組の男たちは人が好さそうな愛想笑いを浮かべて誘ってきた。
「か、彼氏を待ってるので断るってばね!」
「彼氏」という言葉に慣れていない私は勇気を出して、誘いを断った。
けれど男たちはしつこく誘ってくる。
いい加減蹴り倒してやろうか、と考え出した途端、男たちは私から視線を少しずらして固まった。
不思議に思ったのも一瞬。
次の瞬間には背中から冷気を感じた。
気温が下がったのは気のせいかな!?
振り返ると笑顔のミナトが立っていた。
気のせいじゃなかった!
ミナトから冷気が!
っていうか笑顔なのになんでそんなに怖いの!?
気づいた時にはナンパをしてきた男たちはいなくなっていた。
「ごめんねクシナ。なにもされなかった?」
さっきとは打って変わって心配そうな表情を浮かべるミナトに、私はあわてて笑った。
「ミナトってば心配性だよ。あんな奴ら簡単に蹴散らせるってばね」
「クシナが強いのは知ってるけどね」
ミナトは私の手を取って、あろうことか指の先に口づけた。
「でも、クシナは可愛いから、どうしても心配なんだ」
私は金魚みたいに真っ赤な顔で口をパクパクさせるしかなかった。
≪3、気温が下がったのは気のせいかな!?≫