記念日B

□クシナさんの楽しい誕生日
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デートを再開して、今度は映画館に入った。

映画の内容は、戦地に赴いた恋人をけなげに待つ女性の強さを描いた作品だった。

「あー、楽しかった」
「ん。面白かったね」

お茶をしようと私たちは喫茶店に入った。
私はアイスティー、ミナトはアイスコーヒーを頼んで、さっきの映画の話に花を咲かせた。

「あの映画の主人公、素敵だったぁ」

女性なら誰しもが憧れてしまうしなやかな強さを魅力的に描いた作品だった。

私の言葉にミナトも笑顔でうなずいてくれた。
そして同時に爆弾が投下された。



「ん。クシナみたいに強くて綺麗だったね」



「……え…?」

今、なんて、おっしゃいましたかミナトさん。

「……私みたい?」

聞き間違いかと思い、そう聞き返すとミナトは笑顔で「ん」と頷いた。

「もっとも映画の中みたいに、クシナが他の男に言い寄られるなんて考えたくもないけどね」


そう。
さっきの映画の主人公は、恋人が戦場から帰ってくるまで、何人かの男に求婚されていた。
まぁ、映画の結末は戦場から恋人が帰ってきてハッピーエンドを迎えるのだが。

だが…


それ全く冗談に聞こえないから!



さっきナンパを体験した手前、映画の例なんて考えたくもない。

きっとここが戦場になるに違いない。



…でも。


「…私だったら、一緒に戦場に行って戦うってばね」


私は忍びなんだから。
映画の中の女性のように安全なところで待っているのではなく、一緒に戦場に赴きともに戦う。

ミナトは目を丸くして、それから可笑しそうに笑った。


「ん、そうだね。僕らは忍びだ」

「でしょ?」


二人で笑い合って冷たい飲み物をのどに流した。






≪4、それ全く冗談に聞こえないから!≫
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