記念日B

□クシナさんの楽しい誕生日
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日も傾き始め、あたりはオレンジ色に包まれはじめた。

私たちは少し小高い丘に来ていた。

ここは私たちが修行中に見つけた場所で、すべてとはいかないが里が見下ろせる場所だった。

二人で木の下に座って風に当たる。



「楽しかったぁ」

「それはよかったよ」

俺も楽しかったとミナトも微笑む。

ミナトのシャレにならない本気を感じつつ、誕生日デートを満喫した。

「俺がどれだけクシナが好きかわかってもらえた?」

ミナトの問いに思わず今日を振り返ってしまう。

「…えぇ…」

そりゃもう十分。
嬉しいやら怖いやら、貴方の本気は十分理解しましたとも。

「俺、クシナのためならどんなことも頑張れる」

里に向けていた視線をミナトへ移す。

ミナトは微笑みながら手のひらサイズの箱を取り出した。


「…え…」

それって、もしかして…

ミナトはその小さな箱を開けた。

中には小さな光るリング。


「誕生日おめでとうクシナ」


そう言って笑うミナトの顔がにじんで見えなくなる。

「クシナがこれ受けとってくれないと、俺何するかわからないかも」

茶目っ気たっぷりに言うミナトに思わず涙を浮かべたまま笑った。

「まったく、腹ぐ…いえなんでもないです」

私はミナトに抱き着いた。


この腹黒男。
そんなこと本気で言われたら受け取らざるおえないじゃない。

でもね、貴方が私に甘いこと知ってる。
貴方が自分の望みよりも、私の望みを優先させることも。
私の望みが貴方を傷つけるものであったとても。


手段を選んでいられないくらい、クシナが好きなんだよ。


そう私の耳元でささやく彼に、一拍ためてから溜息をついて言った。


「我ながら悪趣味…」


でもそんな貴方が大好きよ、ミナト。








≪5、腹ぐ…いえなんでもないです≫

END2012/9/7
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