記念日B
□紅葉狩り
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「泊りで紅葉狩りに行こうか」
ミナトのそんな一声で、波風一家は秋の山へ出かけることになった。
波風ミナトは木の葉の里の火影だ。
いついかなる時も里のためにと働く立派な忍びである。
優しく温和な人柄のミナトは、里の長として部下から篤い信頼を寄せられている。
そして同時に、部下から心配されるほどの仕事に打ち込む人間であった。
もちろん可愛い妻と子供をないがしろにしているわけではない。
むしろクシナの代わりに率先して家事を手伝い、息子のナルトの面倒を見ている。
妻のクシナも火影である夫の体調は常に気遣っており、昼時に弁当を持って火影の執務室を訪れることも多い。
その時は当然5歳になる息子も一緒にやってくる。
一家団欒の食卓は見ていて微笑ましい。
しかし、ミナトは火影であるため任務以外でほとんど外出はなく、これではあんまりだと部下達は伝説の3忍でもある自来也に話を持ちかけた。
自来也は「仕方ないのう」と言いながらも内心快く引き受けてくれた。
「というわけでミナト、明日と明後日は休みにするからな」
任務の資料を届けに来た奈良シカクは、ポカンと口を開けるミナトにそう言った。
「…でも、任務の資料とかは…」
「自来也様が代理を務めてくださると言っただろう。お前は仕事しすぎだ」
たまには休め、というとミナトは苦笑した。
「…ありがとうシカク。自来也先生や皆にも礼を言わなくちゃね」
「そう思うんだったら、明日はゆっくり家族団欒を楽しめ」
「ん。そうさせてもらうよ。さて、そうと決まったら、さっさと今日の仕事を終わらせちゃおうかな」
「そうしろ。クシナにはさっき式を飛ばして知らせておいた。じきに来るんじゃないか?」
「え!?それじゃ急がないと!」
「その方がいいだろうな」
シカクの言った通り、しばらくしてナルトを連れた買い物帰りのクシナが現れた。
「ミナト、明日と明後日お休みもらえたんでしょう?」
疲れて寝てしまったナルトをあやしながらクシナは微笑んだ。
「ん。代理は自来也先生が務めてくれるって」
「皆に感謝しないとね」
「そうだね」
二人は嬉しそうに笑った。
仕事を終えたミナトは寝ているナルトを預かり、クシナは少しだから大丈夫と買い物袋を抱えて帰路へ着いた。
空は薄暗くなり始めていた。
「明日はどうする?家でゆっくりする?」
クシナは隣を歩く夫を見上げた。
夫は楽しそうに妻を見て言った。
「2日休みがあるんだから、泊りで紅葉狩りにでも行こうか」
可愛い妻は嬉しそうに笑い「ならお弁当ね!」と楽しそうに考えはじめた。