記念日B

□火影の妻の誕生日
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「どうすんのよ、これ…」

張り切って夕食を作ったものの、張り切りすぎて2人分作ってしまった。

時期も時期で、食べ物はすぐ痛む。

どうしようと考えていると玄関の呼び鈴が鳴った。

こんな時間にめずらしいと思いながらもドアを開けた。

そして固まった。


「………ミ、ナト…」


ドアを開けた先には火影で夫でもあるミナトが笑顔で立っていた。







あまりにもびっくりして、名前もうまく呼べなかった。

「え、だって仕事…」

今日帰るなんて聞いてない。

「うん。終わらせてきた。それよりクシナ」

ミナトはにっこり笑った。

「ただいま」

私も嬉しくなって笑顔で言った。

「おかえりなさい」




「あれ?食事2人分作ったの?」

案の定聞かれた質問に、夕方カカシ君に会った経緯を話すと、クシナらしいと笑われた。

そうやって笑いあいながら食事を済ませた。

「またお弁当作ろうと思って食材多めに買ったから、ちょっと間違えちゃったんだってばね!」

「あ、そうだクシナ。俺2日間お休み貰ったから、お弁当は明々後日から頼むよ」

「え、うんわかった…え、休み?」


火影と言えば里の長。
そう簡単には休みは取れない。
年末年始、盆の時期だろうと関係ない。


「休み、とれたの…?」

だからそれがどれだけ貴重なものか理解しているつもりだ。

「うん。本当は今日から休む予定たっだんだけど、どうしてもできなくてこんな時間になっちゃった」

こんな時間と言っても、まだ7時。
全然遅い時間ではない。

「今日のために頑張ったのになぁ」

「え、今日?何かあったっけ?」

建国記念日はまだ先だし、別に祝日でもないし、お祭りやら行事があるわけでもない。

ミナトを見ると、呆れたようなそんな苦笑をした。

「まぁ普段から奥さん放って仕事してる俺が言えた義理じゃないんだけどさ」

「違、だってミナトは火影だから…」

「それは言い訳に過ぎないよ」

「違うってばね!」

ミナトの弱い声を半ば叫ぶようにさえぎる。


「ミナトが頑張っているのは皆のため!その中には私だって入っているんだから、ミナト私の事、放ってなんかないってばね!私、ミナトの、4代目火影の妻として誇らしいんだから!」


私の言葉を、ミナトはキョトンとして聞いていた。

そして突然笑い出した。

「あーあ、俺がプレゼント貰ってどうするの」

「え…プ、プレゼント…?」


するとミナトは椅子を立ち私の横に跪いた。

それは昔絵本で読んだどこかの物語の王子様の様。

そしてミナトはどんな忍術を使ったのか、ポンと花束を出して見せた。

オレンジや黄色を基調とした明るい花束。

そしてそれを私に差し出した。



「生まれてきてくれて、そして俺の妻になってくれて、ありがとうクシナ」



そこでようやく今日が自分の誕生日だったことを思い出した。

でもそれ以上に感動して動けない。

だってミナトは今日も休みにしたかったと言っていた。

でもどうしてもそれができなくて、明日と明後日を休みにしてくれた。


他でもない、私のために。




「…私、ミナトの妻だって、誇り持ってるって、言ったでしょ?それは本当よ」

あふれるものを押さえるのに必死でなかなか声が出ない。

「うん」

でもミナトは優しく相槌を打ってくれる。


「でも、でもね…」

「うん」

だから、今日くらいは許されると思った。


「……さ、さびしかっ……」

「…うん」

ミナトは花束をテーブルに置いて抱きしめてくれた。

「最近は、全然会えなくて……」

「うん。ごめんね」

「でも、今会えて、帰ってきてくれて、嬉し……」

「うん。皆にも強力してもらったんだ。待たせてごめんね」



私はしばらくミナトの腕の中で泣いていた。
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