記念日B

□ヤキモチ
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アカデミーを卒業して随分たって、俺とクシナは結婚した。

今は甘い新婚生活を満喫中だ。


「ミナトなにしてるの?」

クシナがお茶を置きながら俺の手元を覗きこむ。

「ん、これは結婚式に来てくれた人の一覧」

俺はそれを見ながら答える。

「そっかぁ。結構来てくれたね」

「そうだね」

クシナもとなりに座ってそれを見る。




一覧に記載された名前はお世話になった恩師や日頃から親しくしている友人の名前で埋め尽くされていた。



「ミナトは特に友達多かったもんね」

クシナが笑いながら書かれた名前を指さす。

「この人はアカデミーの時からでしょ?」

「そうだね。彼と彼もそうだね」

いくつか指をさす。

クシナも頷く。

そして、「あ、この人」と名前を指さした。

それは、アマデミー時代からの先輩だった。






「…私、この人に告白されたことあるの」





少し間をあけてクシナが懐かしそうに言った。

「え…?」

思わずクシナを見ると「昔ね」と苦笑いした。


「先輩がアカデミーをする時に言われたの」






そんなのは初耳だ。


付き合ったのはアカデミーを卒業してからだから、告白されたのはその前ということだ。

クシナの恋人は俺が最初だから先輩を振ったのはわかる。

わかる、が…






「やだ、ミナト…」

クシナはクスクス笑っている。

「面白くないって顔してる」

「そりゃ、面白くないからね…」

自分でもわかるくらい不機嫌そうな声が出た。

クシナはお腹を抱えて笑いだした。



俺は、アカデミー時代に付き合っていなかったのだから、関係ないといえばそうなのだが、好きな女性が他の男に告白されたら面白くないのは当然で。

それに、今クシナの隣にいるのは俺なんだけど、それでも…

顔が熱くなる。

我ながら、子どもみたいなヤキモチを焼いているのは自覚している。

でも、しょうがないじゃないか。

俺はクシナのことが好きなんだから。




クシナは一通り笑って落ち着いたのか、笑いすぎて出た涙をぬぐった。

「ミナトのヤキモチなんて初めて」

先輩に感謝しないとね、なんて言ってクシナは台所に立った。

「言っておくけど、私はミナトが好きなんだからね」

「…ん」

クシナの愛の言葉に、見透かされたような気がして短い返事しかできなかった。





昔クシナが告白されただけで嫉妬してしまう俺は、一生クシナに勝てないんだろうな、と思いながらお茶を飲んだ。




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