記念日B
□特別な日
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「誕生日おめでとうクシナ」
その時は、本当にびっくりして何も言えなかった。
私は木の葉の里では嫌われ者の部類に入る。
先の戦争もあったから仕方のないことだし、なめられるのが嫌で私が意地張ったから余計それは顕著になった。
だから私の誕生日なんて知っている人はいないと思っていた。
別にそれでいいと思ってた。
嫌々祝われても迷惑なだけだし。
でも、まさか誕生日を知っていて、しかも祝ってくれる人がいるなんて予想していなかった。
普段通りアカデミーに行くと、にこにこ笑うミナトがいた。
「おはようクシナ」
「…おはよ」
いや、ミナトはいつもにこにこしてるけど、今日は何と言うか、なんとなくいつもと違ってとっても楽しそうというか。
何?何かあったの?
周りを見ても、皆に変わりはない。
一体何なのか。
私が怪訝な顔をすると、ミナトは面白そうに笑って、そして可愛い包みを私に差し出した。
「お誕生日おめでとうクシナ」
周りの視線が集まるのが分かった。
忍たるもの常に冷静でいなければならない。
思わずそんなことも飛んでしまうくらい私はびっくりして固まってしまった。
確かに今日は私の誕生日だけど、それを誰かに言ったことはほとんどない。
もちろん目の前のミナトに話したことはない。
私は包みとミナトの顔を交互に見た。
「勝手に聞いてごめんね。誕生日は先生に教えてもらったんだよ」
確かに先生は生徒の情報を持っているから知っているだろうけれど。
皆の嫌われ者をなんで祝おうとするのか分からなかった。
私が動けずにいるとミナトは苦笑して私の手に包みを持たせた。
「プレゼント、受け取ってくれると嬉しいな」
私の手に可愛い包みが渡った時、教室のドアが開いて先生が入ってきた。
ミナトはそれを見て席に着く。
私も席に着く。
とは言っても席が隣だから遠いわけじゃない。
先生は朝の連絡をしている。
私がちらりと隣を見ると、ミナトは当然のことながら先生の話を聞いている。
そんな横顔を見て私は自分の頬が熱くなるのが分かった。
本当はすっごく嬉しかった。
誕生日は特別な日だから祝ってもらえるのは嬉しい。
仕方がないとはいえ、こういう時親しい人がいないのは寂しい。
けれど、ミナトが祝ってくれて、さらにはプレゼントをくれた。
それは自分が思っていたよりも嬉しいみたいだ。
この少年は自分が木の葉に来た時から変わらず笑顔で接してくれる。
そんな彼に惹かれたのはもはや必然ともいえる。
そんな彼からプレゼントを貰えたのは、嬉しい。
それがたとえ友人としてでも。
私はがさごそと可愛い包みを丁寧にあけた。
中にはウサギのぬいぐるみが入っていた。
普段売られた喧嘩を買ってしょっちゅう先生に怒られている男勝りな私だけど、実はこういう可愛いものが大好きだったりする。
思わずぬいぐるみを抱きしめそうになった。
またちらりをミナトを盗み見た。
なんで私の好きなもの知ってるんだろう。
それとも偶然?
どちらにしろすごく嬉しい。
私はウサギのぬいぐるみをもとあったようにできるだけ丁寧に包んだ。
「〜以上で連絡を終わる。今日はこれから外で修業だ。全員速やかに移動するように」
先生の話が終わると教室はざわめき各々移動し始める。
私も移動するため席を立つ。
同じように席から立つミナト。
「あ…ミナト!」
ミナトは優しく笑って、ん?と首をかしげる。
「これ、ありがとってばね」
なかなか素直になれない私は、きっと周りから見たら偉そうな態度だったに違いない。
でもミナトは嬉しそうに笑った。
「気に入ってくれたならよかった」
結構悩んだんだ、と苦笑する。
「それね、他にもシリーズがあってどれがいいかなぁって。クシナはウサギが一番好きでしょ?だからそれにしたんだ」
自分の顔がはたから見ても分かるくらい赤くなったのが分かった。
「な、なんで知って…」
それは誰にも言ってないハズ。
だって、馬鹿にされる。
なのに…
そんな私にミナトは人差し指を唇にあててにっこり笑って言った。
「ないしょ」
私が絶句していると外から先生の声が聞こえた。
「始まっちゃう!ほらクシナ行こう」
「え…あ、待ってよミナト!」
私たちはバタバタと教室を出た。
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