選択式お題

□あいにく傘は一本しか持ってない
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※学パロ



















「やまないなぁ」

昇降口で立ち尽くしてもう30分が過ぎた。

外は雨。

通り雨なのでしばらく待てば上がると思って待ってはいるものの、上がる気配はない。

朝の天気予報は寝坊したため見ていない。

友達は傘を持っていて入れてくれると言ってくれたが、私は遠慮して入らなかった。

雨はあがらない。

もういっそのこと濡れて帰ろうかと腹をくくった時、後ろから声がかかった。



「クシナ?」

振り返ると、同じクラスで想い人でもあるミナトが立っていた。

「ミナト、今帰り?」

そう聞くと「うん」と短く返事が返ってきた。

「クシナは…」

きっと、どうしたの?、と声をかけるつもりだったのだろう。

ミナトは外を見て納得したように笑った。

「傘がないんだよね?」

私はうなだれる。

「すぐに上がると思って待ってたんだけど…」

空を見ても、雨が上がる様子はない。

そんな私をみてミナトは楽しそうに言った。






「じゃぁ、一緒に帰ろうよ」





その言葉に思わず一瞬きょとんとしてしまったが、すぐに首を振った。

「ミナト、家反対方向でしょ?」

ミナトと一緒に帰れば、ミナトの帰りが遅くなってしまう。

ミナトは生徒会長なので、その仕事をしていて帰りが今になったハズなのに。

それに、一緒に帰るってことは相合傘をするわけで、そんなことになったら私の心臓が持たない。

理由はいろいろあるが、ミナトに送らせては悪いと思いありがたく辞退する。

しかしミナトは首をかしげて言う。

「俺と帰るのイヤ?」

「ち、違うってばね!そうじゃなくて…」

そう聞かれるとうまい言い訳を思いつかない。

そうこうしているうちにミナトは傘を開いて私の手を引っ張った。

「さ、帰ろう」

「ちょっ…」

抵抗の声をあげたものの、傘の中に入ってしまったので大人しく従うことにした。

「…ありがとう」

赤くなった顔を見られたくなくて俯いてしまったけれど、鞄を握る手に力をいれて勇気を出して言った。

私がそう言うと、ミナトは嬉しそうに笑った。

雨を待っていなくて良かったなんて、不謹慎だけどそう思った。













別れ際ミナトの後ろ姿を見て、肩が濡れているのが目に入ってさらにキュンってするといい。
END 2010/11/13

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