選択式お題

□たとえば、彼女の肩で眠ること
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執務室のドアが控えめにノックされた。

顔を上げずに返事をするとドアが開いた気配がした。



「ミナト、お昼…」



はっと顔を上げると心配そうな表情をしたクシナがドアから顔を覗かせていた。

慌てて取り繕うように笑った。

「もうそんな時間?キリがついたらすぐ行くよ」

「わかった」

クシナは笑ってそのまま扉を閉めた。





ふうっと息をついて再びペンを紙に走らせる。


四代目火影になってから忙しくなって、時間も忘れて仕事をすることも多くなった。

食事の時間を忘れるなんてザラだし、連続で徹夜もよくあることだ。


ペンを置いて一息ついた。


しかし、つらいわけではない。

自分が頑張ることが皆のためになると思えばがんばれる。





執務室を出て階段を下りる。




部屋に行くとクシナがお弁当を広げて笑顔で待っていた。


「おまたせ。おいしそうだね」

そう言って席に着く。

「当たり前だってばね」

「ん、そうだね。いただきます」

手を合わせてはしを運ぶ。

「うん。おいしい」

クシナはにこりと笑ってお茶を出してくれた。

うん。クシナの笑顔は癒される。

口に出したらクシナは恥ずかしがって、照れ隠しに俺を叩くだろうから言わないけど。



「ミナト、休憩はとったの?」





クシナの言葉にドキリと心臓がなった。

忍者たるもの、いかなる時も平常心でいなければならない。

いなければならない、のだが。

でも、どうしてもクシナの言葉には反応してしまう。



とたんにクシナの笑顔に迫力が増す。




「…ミナト?」

「い、いや、あの…」



さて、どう返せばいいのか。

正直、今日も徹夜明けで朝ごはんも軽くすませて仕事をしていたため、言い訳もできない。

適当な言い訳でクシナが引き下がるとは思えないし。

苦笑いしてみるが、クシナの迫力は増すばかり。





急いで食べてお茶をすする。

「ごちそうさま!それじゃ、俺は仕事に…」

手早くお弁当を片づけてそそくさと部屋を去ろうとする。






「ミナト?」



まだ話は終わっていないとばかりに肩を掴まれる。

痛いよ、クシナ。




ぐいっと腕を引かれて窓際の椅子に強制的に座らせられる。



そしてクシナは隣に座ると俺の頭を自分の肩に寄り掛からせた。




「ク、クシナ?」

恥ずかしがり屋の彼女がこんな風な行動することなんて…

「ちょっとは休めってばね」

そっと見上げてみるが、ここからでは彼女の表情はわからない。



優しく俺の頭に手を乗せ、一定のリズムで優しくあやすように叩く。


それが心地よくて、彼女に体を預ける。




今日終わらせたい仕事が残ってるし、この前の報告の処理もしないといけないし、諸国に連絡もしないといけない、んだけど…




自然とまぶたが閉じていく。

日が当って、気持ちがいい。

それに、あったかい…



静かに意識が途切れるのを感じた。
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