彼のセリフシリーズ
□顔真っ赤にして否定されても…
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※まだ付き合っていません。
「ちっ、違うんだからね!本当に違うんだからっ!!」
クシナが任務で他里に行って一週間が経った。
俺も任務があったけど、そんなに難しい任務じゃなかったので早く帰ってこれた。
任務に行った先は鉱山で宝石商の手伝いをした。
その時に赤い石を見つけて、思わず見入っていた依頼人が簡単なブレスレットにしてくれた。
手首に巻いている赤い石。
その赤があまりにも、あの赤髪のように綺麗だったから、貰った時から肌身離さず持っている。
ふと前を見るとあの赤が見えた。
「クシナ!」
思わず声を上げて走った。
俺の声に気付いたのかクシナが振り返った。
見たところ任務から帰ったばかりのようだ。
「おかえり!もう里に帰ってたんだね」
俺がそう言うと、クシナは何故か焦ったように頷いた。
「怪我はない?」
不思議に思いながらもそう聞くと「大丈夫だってばね」という返事が返ってきたので、ほっと一安心する。
「任務から帰ってきたばかりでしょ?今日はゆっくり…」
休んで、と続けようとした言葉は「ミナト!」という焦った声で止められた。
「…ん?」
突然クシナが腕をつき出したので、何かと首をかしげる。
「ミナト、手!」
「手?」
よくわからないけど手を広げると、その上に赤い勾玉のような石に紐がついたものが置かれた。
「た、たまたま任務に行った先で見つけて、綺麗だったから買ったの!べ、別に、好きな人に渡して身につけてもらうと恋がかなうとか、そういうものじゃないからね!?」
「…えーと、クシナ…」
何というか、語るに落ちているというか…
「た、ただのお守りなんだからね!?」
「…えーっと…」
「ちっ、違うんだからね!本当に違うんだからっ!!」
そう言ってクシナは走って行ってしまった。
クシナが見えなくなった頃、なんとなく顔に手を当ててみた。
「あつ…」
鏡を見なくても顔が赤いことがわかる。
視線を手に落としてよくよく見てみると、それは赤い勾玉のような首飾りだった。
そしてさっきのクシナを思い出す。
最初からなんとなく様子がおかしかったのは、もしかしてこれを俺に渡そうとして緊張していたからだろうか。
『好きな人に渡して身につけてもらうと恋がかなうとか、そういうものじゃないからね!?』
思わず笑ってしまう。
「顔真っ赤にして否定されても…」
きっとすごく緊張していたんだろう。
俺は赤い勾玉を首に下げて帰路に着いた。
さて、明日クシナにあったら、彼女はどんな顔をするのだろう。
とても楽しみだ。
END 2012/4/13
改訂 2012/7/30