彼のセリフシリーズ
□馬鹿、また頑張りすぎてるよ
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私は苦しくて粗くなる呼吸を必死に落ち着けて辺りの気配を探った。
どうやら、敵とは少し距離があるようだ。
地面に座り、ほっとする間もなく自分の怪我を確認する。
「いったぁ…」
肩や腕に浅い傷が走っている。
致命傷こそないものの、脇腹の傷はなるべく早く医療忍者に診てもらいたいところだ。
応急処置を済ませて、経緯を踏まえてこれからの計画を考えよう。
現在3マンセルで要人護衛の任務についている。
街から木葉の里に行くまでの道中、追っ手の忍びに気付いた私たちは、囮をつかうことにした。
そして現在、私が囮になり要人から敵を引き離しているところ。
敵が追ってきている所をみると、作戦はうまくいっているようだ。
何もなければそろそろ要人と仲間は木葉に着いている頃。
万が一を踏まえて、ここはもう少し囮を続けておきたいところだ。
足に力を入れて立ち上がると、脇腹がズキリと痛んだ。
敵のクナイに毒が塗られていないことを祈りながら私は分身を使い、気配を複数出しながら逃げる。
敵が追って来る気配がする。
休んでいたので、さっきよりも気配が近い。
「もう少し…」
もう少し時間を稼げば、要人は里に入り安全を確保される。
そうすればこちらの勝ちだ。
怪我を負ってスピードが落ちたせいか、敵がスピードを速めたせいか−恐らく両方だが、確実に距離は縮まってきている。
とうとう、敵が見える距離にまで迫ってきた。
私は逃げるのを止めて敵と対峙した。
分身を消すと、敵もやっと私が囮だということを理解したようだ。
今引き返した所で要人はもう里の中のはず。
「残念だったわね。私達の勝ちよ」
痛む傷から意識を逸らして、にやりと笑いながら精一杯挑発してやった。
敵が怒りをあらわにしてクナイを構える。
敵の数は3。
対する私は一人でしかも手負い。
明らかに形勢は不利。
それでも負けるわけにはいかない。
ここで死ぬわけにはいかない。
チャクラを溜めながらクナイを構えた。
先に動いたのは敵だった。
放たれたクナイを避け、私もクナイを投げた。
そして同時に印を結ぶ。
「影分身の術!」
投げたクナイを無数に増やす。
敵はわずかな動きで避けた。
でも。
「甘い!」
新たに印を結び私は叫んだ。
「爆!」
そのクナイには起爆札が付いていた。
けたたましい轟音とともに爆発が起き、辺りは少し焼け焦げた。
私のチャクラは、影分身を使いながら逃げてきたことや戦闘で使ったせいで、もう底を尽きそうだ。
ギリギリで逃れた敵は私と距離を取った。
ここから逃げ切るのはまず不可能だろう。
かといってものまま戦い続けるのも厳しい。
さて、どうするか。
一瞬最悪の事態がよぎったが、いつもの強気で振り払い、あくまでも笑顔は絶やさないまま生き残る道を考える。
その時だった。
ざぁっと風が吹いたかと思うと、敵が一人バタリと地面に倒れた。
突然の出来事に、目を見張ると、視界の隅から何か飛び出した。
それは、さながら黄色い光のように、一瞬で敵を倒してしまった。
あぁ、本当に黄色い閃光だ。
呆然としながらそんなことを思った。
そしてその光は私に振り返るとにこりと笑った。
「間に合ってよかった」
優しい笑顔に、今まで張っていた気が緩んで足から崩れてしまった。
「クシナっ!」
さすが黄色い閃光。
私が崩れ落ちる前に支えて、ゆっくりその場に座らせてくれた。
「ミナト、要人は…」
もう里には着いているはずなのだけれど…
ミナトは腰のポーチから応急処置のセットを出してテキパキと私の傷を治療する。
「君のおかげで、無事里に着いたよ」
それを聞いてほっと息を漏らした。
これで任務は無事完了だ。
すると突然こつんと少し強めに頭を叩かれた。
思わず目を丸くしてミナトを見つめると、怒っているような、呆れているような複雑な顔をして言った。
「馬鹿、また頑張りすぎてるよ」
その声があまりにも優しくて思わず泣きそうになった。
それを無理矢理笑顔に変えてミナトに抱き着いた。
ミナトも怪我に障らないように抱きしめ返してくれた。
あぁ、幸せだなぁ。
私はそのまま目を閉じた。
まさかのupし忘れ…
END 2012/4/10
改訂2012/12/13