彼のセリフシリーズ

□もしもし、俺だけど
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※学パロ注意

















彼氏ができた。



私はベッドに寝転がってファッション雑誌を見ていた。

もう夕食も済ませてお風呂も入って、寝るまでの時間をゆったり過ごしていた。

今日放課後に告白された。

相手はクラスの委員長で生徒会長も務める有能で人気者な波風ミナト。



私は半年前に転校してきたのでその時から彼には世話になっていた。

強気で喧嘩っ早い私がクラスになじめたのもミナトのおかげといってもいい。

転校して以来ミナトとは接点を多く持ってきたけど、まさかミナトから告白してくるとは思わなかった。

ミナトは当然のことながら女の子に大人気で、告白されることも多いと友人たちも話していた。

その時にはもうミナトを好きな自覚があったので、告白されてたと毎回聞くたびビクビクしていた。

だからと言って私から告白する勇気なんてなかった。

だってミナトのそばにいる女の子をみて、いつも落胆していた。

あんな風に可愛ければ。
あんな風におしとやかだったら。
あんな風に女の子らしかったら。

すべては空想で、私は可愛いかと言われれば中の中くらいで、おしとやかとは縁もゆかりもないし、女の子らしさなんて欠片も持ってない。



でも今日告白された。

その時は本当にびっくりした。

でも本当なんだ。

嬉しくて思わず顔が緩んだ。

すると突然携帯の着信音が部屋に響いた。

「ぅわい!」

完全に緩んでいたところに不意打ちをされた。

可愛さもへったくれもない奇声を口から吐き出してしまった。

あー、心臓飛び出るかと思ったぁ。

そして携帯を手に取って2度目の驚きに目を見開いた。

「え、ちょ、うそ」

着信の名前は波風ミナト。


なんでミナトから電話!?
私何かした!?
っていうか電話番号教えたっけ!!??

とりあえずでなきゃという半ば使命感で私は通話ボタンを押した。


「も、もしもし?」

もしもし、俺だけど

一昔前の詐欺師か。

でもその声には聞き覚えがありすぎる。

「ミナト…ど、どうしたの?何かあった?」

動揺を必死で隠してそう聞くと「何もないよ」という返事が返ってきた。

じゃぁ一体なんだろう、と考え込むとミナトは柔らかい声で言った。


「ん、ただクシナがどうしてるかなって。俺はクシナが思ってるより、クシナのことが好きだから」

だから、いつもクシナのことばかり考えてる、なんて。


私の思考回路は完全に停止した。

いや、溶けたんだ。完全に。

何も考えられないほど頭が真っ白だ。

今顔に触れなくても熱いことがわかる。

えぇと、どうしよう。

なんて、返せば…


「クシナは何してた?」

「え…あ、えっと、雑誌、見てた…」

頭の中が真っ白で返答がぎこちない。

ミナトは気にしなかったのか柔らかく相槌を打った。

「そっか。邪魔しちゃったかな?」

「ううん!いいの!暇だったから!」

意気込んだ挙句単語しか答えられず落ち込んでいると電話の向こうから小さな笑い声が聞こえた。

私は赤い顔を自覚しながらも文句を言った。

「…笑うなってばね」

私の言葉にミナトは全然謝っているように聞こえない謝罪をすると、そう言えば、と話を切り替えた。

「今度映画に行かない?」

「映画…?」

「うん。この間クシナが見たいって言ってた映画が封切されたし。どうかな?」

それって…もしや、デート!?
だ、だってミナト、彼氏だし。
デート、デートだよね!?
いいんだよね!?

私がまた動揺していると電話の向こうから「クシナ?」とミナトの呼ぶ声が聞こえた。

「もしかしてもう友達と行く約束しちゃった?もしそうだったら無理しなくてもまた今度で…」

「行くってばね!」

ミナトの言葉をさえぎって言った。

「誰とも約束してないし、ミナトと行きたい!」

私の見たかった映画は恋愛要素はなく、どちらかというと戦闘シーンや爆破シーンが見どころとしてメディアでも取り上げられている作品だった。

そのため友人たちはあまり興味を示さなかった。

仕方がないから一人で見に行こうかと考えていた。

だからミナトが誘ってくれて嬉しかった。

うきうきで予定を決めて、おやすみ、また明日と電話を切った。

やったぁ!
ミナトと映画デートだ!!

と浮かれていた私は、電話の向こうでミナトが悶絶していたことを知らない。





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