彼のセリフシリーズ
□声、聞きたいと思って
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「…クシナ、あんたどうしたの?」
「ミナト君と手つないで登校なんて、何があったのよ」
教室についてミナトと別れるなり友人たちに囲まれた。
それもそうだろう。
私は恥ずかしくてミナトと付き合っていることすら一部の友人にしか言っていなかった。
なのに朝私とミナトが手をつないで登校したのを見て、いったい何事かと詰め寄られるのはもはや当然のことだった。
「クシナ?」
「だって、ミナトが…」
昨日、私から電話をした。
無性にミナトの声が聞きたくなって。
朝家を出るとミナトは私の家の前にいて、一緒に登校しようと言った。
もちろん私は頷いて二人で歩き出した。
そして、そこからが問題だった。
「昨日、電話くれて嬉しかったよ」
「…忘れて」
「やだよ。絶対忘れない。クシナから電話くれたから俺嬉しくて会いに来ちゃったんだから」
「…学校でも会うのに?」
「少しでも長く一緒にいたいからね。それと」
ミナトは私の手をするりと握った。
「俺も我慢しないことにしたんだ」
「え、な、何…!?」
「クシナに触れてたいんだ。だから手をつなぎたい。それにクシナを他の人に取られたくないしね」
牽制も含めて、とミナトは笑った。
…けど目は笑っていなかった絶対!!
「だ、誰が取るのよ!」
「クシナは可愛いんだよ?それをもう少し自覚してほしいな」
時々可愛すぎて困ってるんだからと苦笑いされた。
何それ!?
訳が分からないんだけど!?
そして止めを刺された。
「クシナは俺と手繋ぎたくない?」
ということで手を繋いでの登校と相成りました次第でございますはい。
でも、でも…!!
「そんなこと言えるかぁぁぁ!!」
私は机に突っ伏した。
周りからの視線が好奇心から同情へと変わったのがわかった。
それから手を繋いでの登校は恒例と化すのだけど、当然のことながら慣れるまでに相当時間がかかったことは言うまでもない。
END
2012/12/22
改訂2012/12/25