記念日B
□ミナト君のお誕生日
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最初に彼女を見たのは、まだアカデミーにいたころ。
第一印象は赤い髪のきれいな子。
周りはそれが気に入らなかったのか、里の外から来たからか―おそらく後者だが―いじめの対象となり毎日のように喧嘩をしていた。
しかし、連戦連勝の彼女は赤い髪から「赤い血潮のハバネロ」と呼ばるようになった。
それからしばらくして、桜並木の中でいつものように喧嘩をしている彼女を見かけた。
いつもと違うのは、彼女が泣いていたこと。
泣きながら、諦めながら、それでも負けない彼女に強く惹かれた。
その時、彼女が僕に気づいて鋭く睨み悲しい言葉を叫んで走り去った。
『よそ者だから助けてもくれないって言うの!?』
『あんたも!そう思ってるんでしょう!?』
情けないことに、その時やっと彼女がどれだけ傷ついているか気づいた。
喧嘩が強い彼女でも、悲しかったはずなのに。
気丈にふるまっていても、辛かったはずなのに。
泣かないからといって、傷つかないはずないのに!
その日、俺は桜の影で声を殺して泣いた。
あれから俺は、より一層修業に打ち込んだ。
アカデミーを卒業して下忍になって彼女が雲隠れにさらわれかけた時、木の葉の里では迅速に捜索隊が組まれた。
それでも俺には遅かった。
忍具を確認してすぐに里を抜けて森へ向かった。
里を離れるには任務か届け出を出すことが掟で決まっている。
守らなければ当然罰を与えられる。
でも、彼女がいなくなるよりずっとマシだった。
森に入ってすぐに赤い髪を見つけた。
月明かりに照らされる髪。
それに導かれるように森の奥へと進んだ。
国境に入る少し手前で、やっと見つけた。
すばやく敵の忍を倒して彼女の無事を確認する。
多少殴られたような形跡はあるものの、ひどい怪我はないようだった。
彼女を抱きかかえて里に戻る途中二言三言交わしたが、彼女は疲れていたのだろう、そのまま寝てしまった。
里に帰り、彼女を家族に引き渡すと、案の定呼び出された。