記念日B
□特別な日 saidミナト
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ある日、たまたま町でクシナを見つけた。
きょろきょろした後女の子が好きそうなぬいぐるみを手にとって楽しそうに笑っていた。
俺は思わず陰に隠れた。
バレたわけでもないのに。
隠れる必要なんてないのに。
不自然に早い鼓動を鎮めようと深呼吸をする。
「何しとるんじゃ?」
「わっ!」
突然の声に振り向くと不思議そうな表情をした自来也先生が立っていた。
止める間もなく自来也先生はさっき俺が見ていたところへ視線を持っていくと、納得したように「はーん」と笑った。
「青春じゃのう」
「ち、違いますから!」
俺は思わず声を荒げてその言葉を否定した。
しかしこれでは肯定したようなもので思わず顔に熱が集まる、自来也先生は声をあげて笑った。
「若いもんは元気があっていいのう」
俺はため息をつき、クシナがいたほうを見ると、そこにはもう彼女はいなかった。
「邪魔をしてしまったか。悪かったなぁミナト」
「いえ、お気になさらず」
「侘びと言っちゃなんだが、昼飯でも食わんか?」
これは否定しても信じてもらえないなと思いながら、相変わらずにやにや笑っている自来也先生の後をついていくことにした。
「それにしても、プレイボーイのお前さんが女を追っかけるなんて思わなかったぞ」
定食屋に入ってご飯を食べながら楽しそうに話す自来也先生。
というかプレイボーイって何ですか、プレイボーイって・・・
「追っかけていたわけではなくて、たまたま見かけただけですよ」
「たまたま見かけた割にはずいぶん見つめていたのう」
「・・・気のせいですよ」
俺は早口になるのを自覚しながらご飯を食べる。
「あれがミナトの想い人か。気は強そうだが可愛かったのう」
・・・自来也先生は俺の意見を聞くつもりはないようだ。
「赤いハバネロに目をつけるなんて、お前も物好きじゃな」
「そんなことまで知ってるんですか」
先生がクシナのことまで知ってるなんて意外だ。
「まぁのう。あれは将来いい女になるぞ」
「そんなことを言っていると、また綱手さんに怒られますよ」
そう言って味噌汁を啜ると、自来也先生は楽しそうに笑った。
「相手にされるだけマシじゃ!」
つられて笑ってしまったのは仕方がないだろう。